こちらは「おおぐま座」の方向約1200万光年先にある超淡銀河「F8D1」です。ハワイのマウナケア山にある「カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡(CFHT)」の広視野可視光撮像装置「MegaCam」を使って取得されました。
超淡銀河(Ultra-Diffuse Galaxy:UDG、超拡散状銀河)は非常に薄く広がった銀河で、星の数は天の川銀河の100分の1以下という少なさ。その大きさや形態は多様で、矮小楕円銀河(小さく暗い楕円銀河)に似た丸くなめらかな形を持つものもあれば、他の銀河との相互作用によって形がゆがんでいるものもあるといいます。サイズに対して星が少ない超淡銀河の謎に迫る上で、地球に近いF8D1は格好の研究対象になっています。
エディンバラ大学の博士課程学生ルーカス・ゼマイティス(Rokas Žemaitis)さんを筆頭に国立天文台の研究者も参加する研究チームは、国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」やCFHTによる観測の結果、F8D1から流れ出た古い星々で形成されている恒星ストリーム(星やガスでできた川の流れのような細長い構造)を発見したとする研究成果を発表しました。超淡銀河でこのような構造が見つかるのは初めてのこととされています。
F8D1はおおぐま座の渦巻銀河「M81」を中心とした「M81銀河群」に属していて、恒星ストリームはF8D1からM81に向かって流れています。研究チームによると、恒星ストリームの長さはF8D1の大きさの30倍以上に及ぶ約20万光年、地球から見た長さは1度(満月の視直径2個分)以上に達します。この恒星ストリームはM81との潮汐相互作用によって形成されたとみられており、その明るさはF8D1を構成する3分の1以上の星が流れ出たことを示しているといいます。
今回見つかったF8D1の巨大な恒星ストリームは、銀河どうしの重力相互作用によって銀河の性質が大きく変化したことを示す一例とみなされており、超淡銀河の淡い広がりは生まれつきなのか、それとも進化する過程でこのような姿になったのかという疑問に対して、後者の可能性を明確に示す発見となりました。
ゼマイティスさんは「F8D1 が潮汐的に破壊されつつあることは非常に興味深い発見です。今後、他の超淡銀河にも、同じように暗い潮汐尾があるかどうか調べることが重要でしょう」とコメントしています。
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Image Credit: CFHT/Cuillandre, 国立天文台 国立天文台すばる望遠鏡 - 超淡銀河から長く伸びる星の流れを発見 CFHT - A Tale of a Tail: A Tidally-Disrupting Ultra-Diffuse Galaxy in the M81 Group Žemaitis et al. - A tale of a tail: a tidally disrupting ultra-diffuse galaxy in the M81 group (Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)文/sorae編集部