【2023年2月12日8時30分】アメリカ航空宇宙局(NASA)とロスコスモス(Roscosmos)は、国際宇宙ステーション(ISS)に係留中のロシアの補給船「プログレスMS-21」(82Pミッション)で2023年2月11日に熱制御システムの減圧が発生し、ラジエーターから冷却材が漏洩したことを明らかにしました。
NASAによると、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の若田光一宇宙飛行士をはじめ、ISSに滞在中の宇宙飛行士は危険な状況に置かれてはおらず、ISSは通常通り運用されています。ロスコスモスで有人宇宙飛行プログラム担当エグゼクティブディレクターを務めるセルゲイ・クリカレフ氏は、今回の状況が2022年12月に宇宙船「ソユーズMS-22」で冷却材の漏洩が発生した時に似ており、今後の打ち上げで同様のトラブルに直面しないために徹底した分析が必要だとコメントしています。
無人のプログレスMS-21は2022年10月26日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、10月28日にISSロシア区画の「ポイスク」モジュールへのドッキングに成功してから4か月近く係留されています。プログレスMS-21は2023年2月18日にISSから分離して太平洋上で大気圏に再突入し、ミッションを終える予定になっています。なお、ISSには2023年2月11日に別の補給船「プログレスMS-22」(83Pミッション)が到着しています。
ロスコスモスは2023年2月11日21時56分(日本時間)にテレグラムで「プログレスMS-21で減圧が記録された」と投稿。翌2月12日2時15分(日本時間)に情報を更新し、クリカレフ氏の言葉として「熱制御システムから冷却材が漏洩した」と報告しています。NASAによればプログレスMS-21とISSを隔てるハッチは開放されており、ISS内部の温度・圧力は正常とされています。ロシア国営のタス通信によると、ISSからの分離も予定通り2月18日に行われる見込みです。
前述の通り、ISSでは2022年12月15日にも、係留中のソユーズMS-22から冷却材が漏洩するトラブルが発生していました。調査の結果、冷却材はソユーズ宇宙船の後部にある機器/推進モジュール(エンジンや太陽電池アレイがある部分)外装のラジエーター配管に生じた直径1mm弱の穴から漏れ出したとみられています。NASAとロスコスモスはソユーズMS-22をクルーの帰還に用いないことを決定しており、代わりに次の宇宙船「ソユーズMS-23」が2月20日に無人のまま打ち上げられることになっています。
関連:冷却材が漏れたロシアの宇宙船「ソユーズMS-22」クルーの帰還に使用しないことが決定(2023年1月12日)
ソユーズMS-22では配管の穴は微小隕石の衝突によって生じた可能性が指摘されていましたが、今回プログレスMS-21でも同様のトラブルが起きたとすれば、ソユーズ宇宙船やプログレス補給船の側に原因が潜んでいる可能性も高まります。ロスコスモスはNASAの支援を受けつつ今回のトラブルの原因調査に着手しており、タス通信は関係者の話として、熱制御システムの材料や製造工程だけでなく打ち上げ手順も注意深く調査されると伝えています。
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Image Credit: NASA NASA - Space Station (NASA Blogs) Roscosmos (Telegram) TASS - Science & Space文/sorae編集部