こちらは2023年4月に打ち上げが予定されている欧州宇宙機関(ESA)の無人探査機「JUICE」です。欧州で組み立てと各種試験が行われていたJUICEは輸送機に積み込まれてフランスのトゥールーズを飛び立ち、2023年2月8日にギアナ宇宙センターがあるフランス領ギアナのカイエンヌ・フェリックス・エブエ国際空港に到着しました。
JUICEは「JUpiter ICy moons Explorer」の略で、日本語では「木星氷衛星探査計画」と呼ばれています。その名が示すように、JUICEの主な探査目標はガリレオ衛星とも呼ばれる木星の四大衛星のうち、エウロパ・ガニメデ・カリストの3つ。ミッション前半では木星を周回しながら3つの氷衛星をフライバイ観測し、ミッション後半ではガニメデの周回軌道に入って観測を行う計画です。
JUICEは2023年4月13日に、欧州の「アリアン5」ロケットに搭載されてギアナ宇宙センターから打ち上げられる予定です。打ち上げ後のJUICEは地球と金星で4回のスイングバイを繰り返して徐々に軌道を変更。木星には2031年7月に到着して観測を開始し、2034年12月にガニメデの周回軌道へ入ります。なお、ミッションには宇宙航空研究開発機構(JAXA)、アメリカ航空宇宙局(NASA)、イスラエル宇宙局(ISA)も参加して観測機器を提供しています。
人類は地球以外に生命が誕生した天体を知りません。生命は地球に固有の存在なのか、それとも太陽系の他の天体や、太陽系外でも誕生する可能性はあるのでしょうか。JUICEは「惑星の形成および生命誕生の条件とは?」と「太陽系はどのように機能しているのか?」の2つをテーマに、木星のガリレオ衛星や木星の大気・磁気環境・環などの観測を行います。
地球の5倍も太陽から離れていて表面は凍りついている木星の氷衛星ですが、注目されているのはその内部です。木星などの巨大ガス惑星を公転する氷衛星の一部では、潮汐加熱(※)によって内部で液体の水が維持されることで、氷の外殻の下に広大な内部海が存在するのではないかと予測されているのです。エウロパや土星の衛星エンケラドゥスでは、内部から噴出したとみられるプルームが実際に観測されています。
※…別の天体の重力がもたらす潮汐力によって天体の内部が変形し、加熱される現象のこと。
地球の生命には「液体の水」「有機物」「エネルギー」が必須だと考えられていますが、太陽光が降り注ぐことのない氷衛星の内部海でも潮汐加熱をエネルギー源として、地球の海底にある熱水噴出孔でみられるような生命が存在しているかもしれません。JUICEはエウロパやガニメデに存在すると思われる内部海を探索し、その環境を探ります。
【▲ ガニメデをフライバイするJUICE探査機のイメージ(動画)】
(Credit: ESA / ATG medialab)
また、太陽系がどのようにして形成されたのかや、地球に水や大気がどのようにしてもたらされたのかは、まだ完全には理解されていません。その謎に迫る鍵とみられているのが、太陽系最大の惑星である木星です。地球の約318倍もの質量がある木星は、重力を介して他の惑星や小惑星などと相互作用することで、太陽系の姿に影響を及ぼした重要な天体だとみなされています。
その木星がいつ、どのようにして形成されたのかを理解することにつながるデータを得るのもJUICEの目的の一つです。木星の材料となった物質は厚い大気の奥底にあるので直接調べることはできませんが、JUICEが探査する木星の氷衛星には、木星形成当時の物質が「化石」のように残されている可能性があると期待されています。
木星到着まで8年、ガニメデ周回軌道投入まで12年近くを要する長期間のミッションに挑むJUICE、まずは無事の打ち上げを願います!
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Image Credit: ESA-CNES-Arianespace/Optique video du CSG/S. Martin, ESA / ATG medialab ESA - Juice JAXA - JUICE-JAPAN - 木星氷衛星探査計画 ガニメデ周回衛星文/sorae編集部