2022年、航空自衛隊は東京都府中市の府中基地で新たに「宇宙作戦群」を編成しました。この部隊は2020年に発足した「宇宙作戦隊」の上級部隊として、宇宙領域の作戦における指揮系統を担います。
宇宙作戦群が担う役割は、衛星放送や測位などで利用される人工衛星の安全を確保するための「宇宙状況把握(SSA Space Situational Awareness)」です。同群はJAXAや海外機関とも連携して、急増するスペースデブリ(宇宙ゴミ)などの接近といった衛星に危険を及ぼしかねない状況の情報収集・処理・共有を行います。
世界の衛星を活用した観測市場は年々増加しており、それに比例して今後は宇宙状況把握のミッションも増加すると予想されます。そこで、宇宙作戦群では人材面での補強にも力を入れており、2023年現在、宇宙人材の募集を行っています。宇宙領域専門部隊配属へのキャリアマップとして公表されているのは「技術航空幹部」「一般幹部候補生」「一般曹候補生」「自衛官候補生」の4コースです。
技術航空幹部は、経験や資格を持つ人材を採用して宇宙業務の幹部自衛官育成をめざすとされるコースです。入隊後は幹部候補生学校で学んだ後、書類や面接での選考を経て宇宙領域専門部隊に配属されます。このコースを志望するには、官公庁、大学、民間企業で宇宙領域の実務経験3年以上が必要です。
一般幹部候補生は、多様な職種を採用して幹部自衛官の育成をめざすとされるコースです。入隊後は幹部候補生学校で学んだ後、航空自衛隊などで現場の経験を積み、書類や面接での選考を経て宇宙領域専門部隊に配属されます。このコースでは指揮官および指揮官を補佐する幕僚として必要な能力も養います。
一般曹候補生と自衛官候補生を採用するコースでは、現場の要となる人材育成をめざすとされています。入隊後は航空教育隊で学んだ後、航空自衛隊などで経験を積み、現場のプロフェッショナルとして階級をステップアップした後に書類や面接での選考を経て宇宙領域専門部隊に配属されます。
これら4つのコース以外でも、宇宙作戦群は人材育成に力を入れています。研究や新技術の開発をめざす理・工学部等の一般大学・大学院専攻者には、選考の上で「技術貸費学生」として学資金が貸与され、就学サポートも実施されています。
2022年の発足後、宇宙作戦群では世界各国との防衛交流や海外研修を実施しており、情報処理を行うオペレーションセンターでのデータ解析シミュレーション、クルー員の連携といった教育訓練が行われてきました。防衛省は山口県に宇宙状況監視レーダーの設置を進めており、今後も地上設置型レーザー測距装置の導入や、宇宙設置型の光学望遠鏡SSA衛星の打ち上げなど、さらなる宇宙監視体制の構築が進められる予定です。
宇宙人材の採用人数は公表されていませんが、こうした宇宙状況把握の体制拡充に向けた動きを背景に、今後も人材の必要性は高まっていくといえるでしょう。「宇宙」をめざす新たな選択肢として、宇宙作戦群の宇宙人材を目指してみるのはどうでしょうか。
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Image Credit: 防衛省 防衛省 - 宇宙作戦群 [Space Operations Group] 防衛省(PDF) - 山口県山陽小野田市における宇宙状況監視レーダー設置について 航空自衛隊チャンネル(YouTube) - 宇宙作戦群の新編について 防衛省・自衛隊 - 令和4年版防衛白書:第3節 宇宙・サイバー・電磁波の領域での対応文/石原健児