2023年3月12日(日本時間・以下特記なき限り同様)、アメリカ航空宇宙局(NASA)の有人飛行ミッション「Crew-5(クルー5)」のクルーを乗せたクルードラゴン宇宙船「エンデュランス(Endurance)」は、米国フロリダ州沖合のメキシコ湾へ着水しました。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の若田光一宇宙飛行士ら4名は、157日間に渡るミッションを終えて帰還を果たしました。
Crew-5のクルーはNASAのニコール・マン(Nicole Mann)宇宙飛行士とジョシュ・カサダ(Josh Kassada)宇宙飛行士、ロスコスモス(Roscosmos)のアンナ・キキナ(Anna Kikina)宇宙飛行士、そして若田宇宙飛行士の4名です。若田飛行士らを乗せたエンデュランスは2022年10月6日1時ちょうどにフロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられ、翌10月7日6時1分にISSとのドッキングに成功しました。
関連:若田光一さんがISSに到着 クルードラゴン「エンデュランス」ドッキング成功(2022年10月7日)
2023年3月11日にISSを離れるまで6か月近くの間、4名は実験や作業に取り組みました。若田飛行士はマン飛行士とともに計2回の船外活動(2023年1月20日~21日、2023年2月2日~3日)を行い、低下したISSの発電能力を補うために設置が進められている新しい太陽電池アレイ「iROSA」の取り付け架台設置作業に従事しています。ちなみに2023年1月の船外活動は、今回が初の宇宙飛行だったマン飛行士はもちろんのこと、若田飛行士にとっても初の船外活動となりました。
関連
・若田さん初の船外活動終了 NASA宇宙飛行士とともに新型太陽電池アレイの設置準備作業を実施(2023年1月21日)
・若田さん2回目の船外活動終了 新型太陽電池アレイの設置準備作業をNASA宇宙飛行士とともに実施(2023年2月4日)
船外活動だけでなく、若田飛行士は滞在中のISS船内でも様々な作業を実施しています。たとえば、将来の月や火星における有人探査では人が乗る有人与圧ローバーをはじめ、環境制御・生命維持システム、推進剤の精製プラントなどでいろいろな液体が取り扱われます。低重力な月や火星の表面では液体の挙動が地球上とは異なりますが、その挙動を調べて将来の機器設計に役立てる実験を行うために、若田飛行士は実験装置のセットアップと実験の開始操作を行いました。
他にも、宇宙の微小重力環境が身体にもたらす影響と加齢にともなう影響の類似性(骨・筋の萎縮、代謝不全など)を利用した実験でのモデル生物(線虫)の培養や、アジア太平洋地域の青少年から応募された201件のテーマから選定された6つ実験の実施、日本実験棟「きぼう」から放出される超小型衛星の放出準備や放出後の撮影などが若田飛行士によって行われました。
若田飛行士ら4名が搭乗したエンデュランスは2023年3月11日16時20分にISSを離脱し、3月12日11時2分(米国東部標準時3月11日21時2分)にフロリダ州タンパ沖合のメキシコ湾へ着水。間もなくスペースXの回収船「シャノン(Shannon)」に引き上げられたエンデュランスから、若田飛行士はスタッフに助けられながら3番目に船上へと降りました。
JAXAによると、Crew-5ミッションを終えた若田飛行士の通算宇宙滞在時間は504日18時間35分、通算ISS滞在時間は482日15時間57分で、どちらも日本人宇宙飛行士としての最長記録を更新したということです。
Source
Image Credit: NASA/Keegan Barber NASA - Space Station (NASA Blogs) JAXA - 国際宇宙ステーション長期滞在クルー 若田光一宇宙飛行士搭乗のクルードラゴン宇宙船(Crew-5)帰還について JAXA - 若田宇宙飛行士 ISS長期滞在ミッション特設サイト文/sorae編集部