こちらは「おうし座」の方向約6500光年先にある超新星残骸「かに星雲(Crab Nebula)」です。超新星残骸とは、質量が太陽の8倍以上ある大質量星で超新星爆発が起こった後に観測される天体のこと。超新星爆発にともなって発生した衝撃波が広がり、周囲のガスを加熱することで、可視光線やX線といった電磁波が放射されていると考えられています。
かに星雲は1731年にイギリスのジョン・ベヴィスによって発見されました。18世紀にフランスの天文学者シャルル・メシエが星雲や星団をまとめた「メシエカタログ」では「メシエ1(Messier 1、M1)」として1番目に収録されています。20世紀に入ると1054年に観測された超新星との関連性が明らかになり、この超新星の残骸だと考えられるようになりました。
また、かに星雲では超新星爆発にともなって誕生したとみられるパルサー(※)「かにパルサー(Crab Pulsar)」が1968年に電波観測で発見されています。パルサーから吹き出たパルサー風は超新星残骸と衝突してX線や電波などを放射させており、かに星雲はこれらの電磁波が観測されるパルサー星雲(またはパルサー風星雲)の一つとしても知られています。
※…点滅するように周期的な電磁波が観測される中性子星の一種。高速で自転する中性子星からビーム状に放射されている電磁波の放出方向が自転とともに周期的に変化することで、地球では電磁波がパルス状に観測されると考えられている。
冒頭の画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡で撮影されたもので、米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)から2023年3月15日付で公開されています。NOIRLabによると、かに星雲は今から50年前の1973年に実施された同望遠鏡による最初の観測の対象でもあったということです。
Source
Image Credit: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA NOIRLab - A legendary nebula文/sorae編集部