こちらは「ろくぶんぎ座」の方向約6億光年先にある渦巻銀河「JO204」です。JO204は銀河団「A957」を構成する銀河のひとつ。中心部分とその周りを取り巻く渦巻腕(渦状腕)が明るく輝くJO204を、私たちは真横に近い角度から観測しています。
よく見ると、JO204から画像の下方向へと流れていく斑(まだら)模様の連なりのような構造が、幾つも写っていることがわかります。触手を伸ばしたクラゲの姿にも見えることから、このような銀河は「Jellyfish Galaxy(クラゲ銀河)」と呼ばれています。
欧州宇宙機関(ESA)によると、こうしたクラゲ銀河の“触手”は、銀河からゆっくりとガスが剥ぎ取られたことで形成されたと考えられています。銀河の集合体である銀河団では、銀河と銀河の間が銀河団ガスで満たされています。銀河団の中を移動する銀河がこのガスから動圧(ラム圧)を受けて自身のガスを少しずつ剥ぎ取られた結果、“触手”が形成されたのではないかというわけです。
この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータ(近紫外線・可視光線・近赤外線のフィルター合計6種類を使用)をもとに作成されました。ESAによると、ハッブル宇宙望遠鏡によるJO204の観測は、クラゲ銀河の“触手”にみられる星形成活動に関する研究の一環として行われました。こうした“触手”は極端な環境における星形成の一例を示しており、宇宙の他の場所における星形成の過程を理解する上で役立つ可能性があるということです。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として、ESAから2023年4月10日付で公開されています。
Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team ESA/Hubble - A jellyfish and the ram文/sorae編集部