こちらに写っているのは南天の「がか座」(画架座)の一角。画像の横方向の範囲は満月の視直径の約12分の1に相当します(視野は2.59×1.92分角)。
あちこちに見えるぼんやりと輝く天体は、銀河団「ACO S520」に属する銀河です。画像の中央やや上にある2つの明るいスポットを持つ楕円銀河は、ACO S520で最も明るい銀河。この銀河や左下に見える別の2つの楕円銀河の周囲には、無数の小さな銀河が写っています。夜空に浮かぶ満月よりもはるかに狭い範囲にこれだけ沢山の銀河が見えると思うと、宇宙の広大さに圧倒されてしまいます。
銀河団とは、数百~数千の銀河からなる巨大な天体のこと。それ自身が何百億~何千億もの星々の集まりである銀河が何百、何千と集まっているのですから、銀河団は途方もない質量を持つことになります。その質量の大部分は未知の暗黒物質(ダークマター)が占めており、銀河団の研究を通して暗黒物質の分布についての知見を得ることができるといいます。
また、銀河団の膨大な質量は「重力レンズ」効果をもたらすことがあります。重力レンズとは、手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間が歪むことで、その向こう側にある天体(光源)から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像が歪んだり拡大して見えたりする現象です。重力レンズは遠方の天体を観測するための“天然の望遠鏡”として利用することも可能です。
この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で2022年7月に取得したデータ(可視光線と近赤外線のフィルターを使用)をもとに作成されたもので、ハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として欧州宇宙機関(ESA)から2023年4月24日付で公開されました。ESAによると、ハッブル宇宙望遠鏡によるACO S520の観測は、これまでに捉えられたことのない大規模で明るい銀河団の捜索の一環として実施されたということです。
Source
Image Credit: ESA/Hubble & NASA, H. Ebeling ESA/Hubble - The cluster that almost got away文/sorae編集部