アメリカ航空宇宙局(NASA)は4月26日、今年で打ち上げから46周年を迎える惑星探査機「ボイジャー2号」について、科学機器に供給する電力を確保するための新たな措置を講じたと発表しました。今回の措置によって、NASAはボイジャー2号の科学機器のシャットダウン開始を2026年まで先送りできる見込みです。
1977年8月に打ち上げられたボイジャー2号は、木星・土星・天王星・海王星を一度のミッションで探査する通称「グランドツアー」を行ったことで知られています。2018年11月にボイジャー2号は太陽圏(ヘリオスフィア、太陽風の影響が及ぶ領域)を離脱し、同型機「ボイジャー1号」(2012年8月に太陽圏離脱)に続いて星間空間に到達した人工物となりました。
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2023年4月27日現在、NASAによればボイジャー2号は太陽から約199億2748万km(約133.2天文単位)離れたところを太陽に対して秒速約15.4kmで飛行しており、地球とボイジャー2号の通信は片道だけでも約18時間26分かかります。
太陽から遠く離れて飛行するボイジャー1号と2号には、動力源として放射性同位体熱電気転換器(Radioisotope Thermoelectric Generator:RTG、原子力電池の一種)が搭載されています。プルトニウム238の崩壊熱から電気を得るボイジャーのRTGの発電量は時間が経つとともに低下していくため、飛行に不可欠ではないヒーターなどの装置をオフにすることで、科学機器に供給する電力が確保され続けてきました。
しかし、不要な装置の電源をオフにして電力を確保する方法には限界があります。現在ボイジャー2号は5つの科学機器を使って星間空間の貴重な観測データを取得し続けていますが、代わりにオフにできる装置はもう残っておらず、次は科学機器の1つをオフにしなければならない状況だったといいます。
科学機器をオフにすることなく電力を確保する方法を検討したボイジャーの運用チームは、予備の電力も観測に割り当てることを決定しました。ボイジャーを運用するNASAのジェット推進研究所(JPL)によると、ボイジャーには電圧が大幅に変動した時に機器を保護するための安全装置が備わっており、バックアップ回路に供給するためのわずかな電力が確保されているといいます。この電力を割り当てることで、科学機器をシャットダウンし始めるタイミングを先送りしようというわけです。
JPLによれば、この措置によってボイジャー2号の電圧は厳密に制御されなくなるものの、電圧の大幅な変動には運用チームが対処できるといいます。また、打ち上げから45年以上が経った現在でもボイジャーの電気系統は比較的安定しており、安全装置の必要性は低く抑えられているとされています。ボイジャー2号で良い結果が得られた場合、ボイジャー1号でも同様の措置を講じる可能性があるようです。
ボイジャー1号と2号のプロジェクトマネージャーを務めるJPLのSuzanne Doddさんは「電圧の変動がもたらす機器のリスクは小さなものであり、科学機器をより長い期間オンにしておくほうがより大きな成果を得られると判断しました」「ボイジャー2号を数週間見守ってきましたが、新たな措置は良好に機能しているようです」とコメントしています。
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Image Credit: NASA/JPL-Caltech NASA/JPL - NASA’s Voyager Will Do More Science With New Power Strategy文/sorae編集部