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ウェッブ宇宙望遠鏡で観測した“おとめ座”の棒渦巻銀河「NGC 5068」の中心付近

sorae.jp 2023年6月10日 11時23分

こちらは「おとめ座」の方向約1700万光年先にある棒渦巻銀河「NGC 5068」の中心付近の様子です。「ジェイムズ・ウェッブ(James Webb)」宇宙望遠鏡の「近赤外線カメラ(NIRCam)」と「中間赤外線観測装置(MIRI)」で取得したデータをもとに作成されました(※)。棒渦巻銀河とは、中心部分に棒状の構造が存在する渦巻銀河のこと。棒状構造は私たちが住む天の川銀河をはじめ、渦巻銀河の半分程度が持つと考えられています。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)で観測された棒渦巻銀河「NGC 5068」の中心付近(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team)】

※…ウェッブ宇宙望遠鏡は人の目で捉えることができない赤外線の波長で主に観測を行うため、公開されている画像の色は取得時に使用されたフィルターに応じて着色されたものです。この画像ではNIRCamで捉えた2.0μmを青、3.0μmを緑、3.35μmをオレンジ、3.6μmを赤で、MIRIで捉えた7.7μmを紫、10μmをシアン、11μmを黄、21μmを赤で着色しています。

欧州宇宙機関(ESA)によると、可視光線に近い近赤外線で観測を行うNIRCamは、NGC 5068を構成する数多くの星々や、その内部で誕生した若い星に照らし出されたガスの雲を捉えています。星々の密度は画像左上に位置する銀河中心部の棒状構造で最も高く、渦巻腕(渦状腕)へ向かうにつれて低くなっていきます。いっぽう、波長がより長い中間赤外線を利用するMIRIは、まるで銀河を支える骨組みのように集中した塵の様子や、輝くガスの泡状の構造を捉えました。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)で観測された棒渦巻銀河「NGC 5068」の中心付近(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team)】

ウェッブ宇宙望遠鏡によるNGC 5068の観測は、近傍宇宙の銀河を対象とした観測プロジェクト「PHANGS」(Physics at High Angular resolution in Nearby GalaxieS)の一環として実施されました。「ハッブル」宇宙望遠鏡をはじめ、チリの電波望遠鏡群「アルマ望遠鏡(ALMA)」、同じくチリのパラナル天文台にあるヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」も参加するPHANGSプロジェクトでは、銀河における星形成を理解するために、様々な波長の電磁波を使った高解像度の観測が数年に渡って行われています。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の中間赤外線観測装置(MIRI)で観測された棒渦巻銀河「NGC 5068」の中心付近(Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team)】

恒星や惑星系はガスと塵が集まったガス雲の中で形成されますが、塵には可視光線を遮る性質があります。ESAによれば、塵に遮られにくい赤外線の波長で観測を行うウェッブ宇宙望遠鏡は、塵の向こう側で進む星形成のプロセスを研究するのに最適だということです。

ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えたNGC 5068の画像は“ウェッブ宇宙望遠鏡の今月の画像”として、ESAから2023年6月2日付で公開されています。

 

【▲ 棒渦巻銀河NGC 5068の中心付近へズームイン(ESAが公開している動画)】
(Credit: ESA/Webb, NASA, CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team, Dark Energy Survey/DOE/FNAL/NOIRLab/NSF/AURA, DSS, N. Bartmann (ESA/Webb), E. Slawik, N. Risinger, D. de Martin (ESA/Webb), M. Zamani (ESA/Webb); Music: Tonelabs – The Red North (www.tonelabs.com))

 

Source

Image Credit: ESA/Webb, NASA & CSA, J. Lee and the PHANGS-JWST Team ESA/Webb - Webb peers behind bars

文/sorae編集部

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