ベルリン自由大学のFrank Postbergさんを筆頭とする研究チームは、土星の衛星「エンケラドゥス」の内部海(地下海)から噴出したとみられる水の氷粒に含まれていたリンをリン酸塩の形で直接検出したとする研究成果を発表しました。
土星探査機「Cassini(カッシーニ)」が土星のE環を通過した際に取得された「宇宙塵分析器(CDA)」の観測データを分析した研究チームによると、エンケラドゥスの内部海には様々な水溶性のリン酸塩に含まれる形でリンが存在しており、その濃度は地球の海と比べて少なくとも数百倍、場合によっては数千倍から数万倍に達する可能性があるといいます。土星のE環はエンケラドゥスから噴出した物質で構成されていることが知られています。
内部海の海水に高濃度でリンが濃集したのは、アルカリ性かつ炭酸濃度の高い海水との相互作用によって海底の岩石に含まれるリン酸カルシウムが溶け出し、より安定した炭酸カルシウムが形成される過程で、リン酸カルシウムからカルシウムが奪われたからではないかと研究チームは考えています。こうした環境はエンケラドゥスだけでなく、土星やその外側を公転する天王星や海王星の衛星、冥王星の内部などでも整っている可能性があるといいます。
地球の生命に欠かせないリンがエンケラドゥスの内部海に高い濃度で存在することを示した今回の成果は、今後の太陽系における地球外生命探査に大きな影響を与えるものとなりそうです。Postbergさんたちの研究成果をまとめた論文はNatureに掲載されています。
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Image Credit: NASA/JPL/Space Science Institute NASA/JPL - NASA Cassini Data Reveals Building Block for Life in Enceladus’ Ocean SwRI - Key building block for life found at Saturn’s moon Enceladus 東京工業大学 - 土星衛星エンセラダスの海に生命必須元素リンが異常濃集 Postberg et al. - Detection of phosphates originating from Enceladus’s ocean (Nature)文/sorae編集部