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ESAのユークリッド宇宙望遠鏡が試運転段階へ 試験的に撮影された画像公開

sorae.jp 2023年8月4日 10時0分

こちらは欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「ユークリッド(Euclid)」で試験的に取得された画像です。一辺の長さは満月の見かけの直径の約4分の1に相当します。視野を埋め尽くす無数の星々や、右下に写っている渦巻銀河の形態などが詳細に捉えられています。

【▲ ユークリッド宇宙望遠鏡の可視光観測装置(VIS)で試験的に取得された画像。合計36個の検出器のうち1つで取得されたもの(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA)】

日本時間2023年7月2日に打ち上げられたばかりのユークリッドは、通常の物質に対して重力を介してのみ影響を及ぼすとされる暗黒物質(ダークマター)や、宇宙の加速膨張をもたらしていると考えられている暗黒エネルギー(ダークエネルギー)の謎に迫ることを目的に開発された宇宙望遠鏡です。

【▲ ユークリッド宇宙望遠鏡の想像図(Credit: ESA, Acknowledgement: Work performed by ATG under contract for ESA)】

ユークリッド宇宙望遠鏡は7月下旬までに太陽と地球の重力や天体にかかる遠心力が均衡するラグランジュ点のひとつ「L2」(地球からの距離は約150万km)を周回するような軌道(ハロー軌道)に到着しており、搭載されている2つの観測装置の試運転が始まっています。

【▲ ユークリッド宇宙望遠鏡(Euclid)の軌道(緑)を示した動画】
同じくL2周辺で観測を行っているジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST:青)やガイア宇宙望遠鏡(Gaia:黄)の軌道も描かれている。
(Credit: ESA/Gaia/DPAC)

冒頭の画像はユークリッド宇宙望遠鏡の「可視光観測装置(Visible Instrument:VIS)」を構成する検出器の1つで取得されました。ESAによると、波長550~900nmをカバーするVISは36個の検出器で構成されていて、何十億という銀河の鮮明な画像を取得してその形状を測定するために用いられます。ちなみに、画像のあちこちに見える細い線は検出器に衝突した宇宙線によるものです。

【▲ ユークリッド宇宙望遠鏡の可視光観測装置(VIS)で試験的に取得された画像。左は36個の検出器全体の視野で、右はそのうちの1つ(白い四角で囲まれた部分)を拡大したもの(冒頭に掲載した画像と同じ)(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA)】

次に掲載するのはユークリッド宇宙望遠鏡の「近赤外線分光光度計(Near Infrared Spectrometer and Photometer:NISP)」で取得された画像です(波長920~1146nmのフィルターを使用)。こちらも一辺の長さは満月の見かけの直径の約4分の1に相当します。NISPは全部で16基の検出器で構成されていて、この画像はその一部(視野全体の4パーセント)を拡大したものとなります。

【▲ ユークリッド宇宙望遠鏡の近赤外線分光光度計(NISP)で試験的に取得された画像。NISPの視野全体のうち4パーセントに相当する(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA)】

ESAによると、波長900~2000nmをカバーするNISPは赤外線の波長での銀河の画像化とスペクトル(電磁波の波長ごとの強さ)の取得に用いられます。スペクトルを取得すると銀河までの距離を測定できるため、前述のVISで取得された銀河の形状の情報と組み合わせることで、銀河が宇宙全体でどのように分布しているのか、時間の経過とともに分布がどのように変化してきたのかを示す立体地図を作成することができるといいます。この立体地図からは最終的に暗黒物質や暗黒エネルギーに関する情報が得られると期待されています。

【▲ ユークリッド宇宙望遠鏡の近赤外線分光光度計(NISP)で試験的に取得されたスペクトル。1本の線が1つの天体のスペクトルを示している(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA)】

今回公開されたのはユークリッド宇宙望遠鏡の試運転中に取得されたものであり、最終的に研究に使われるのはさらに長時間の露光で取得され、宇宙線の影響も除去された画像となります。ESAによると、本格的な科学観測の前に機器のチェックやテストが数か月に渡って行われるということです。ユークリッド宇宙望遠鏡で試験的に取得されたこれらの画像は2023年7月31日付でESAから公開されています。

 

Source

Image Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA ESA - Euclid test images tease of riches to come

文/sorae編集部

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