アメリカ航空宇宙局(NASA)は9月6日、NASAの月周回衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter:LRO)」で撮影された、月探査ミッション「チャンドラヤーン3号(Chandrayaan-3)」の着陸地点付近の画像を公開しました。【2023年9月7日10時】
こちらが公開された画像です。チャンドラヤーン3号の着陸4日後に、LROに搭載されている光学観測装置「LROC」で取得したデータを元に作成されました。中央に描かれた四角い枠の内側を見ると、着陸時のエンジン噴射が月の土壌(レゴリス)に作用したことで月面の一部が明るくなっており、そこにチャンドラヤーン3号のランダー(着陸機)の影が見えているとされています。
チャンドラヤーン3号はISROによる3回目の月探査ミッションです。探査機は月面に着陸するランダー「Vikram(ビクラム、ヴィクラム)」、ランダーに搭載されているローバー(探査車)「Pragyan(プラギャン)」、着陸前までの飛行を担う推進モジュールで構成されていて、ランダーには3基、ローバーには2基の観測装置が搭載されています。
2023年7月14日に打ち上げられたチャンドラヤーン3号は2023年8月5日に月周回軌道へ到達し、ランダーは日本時間2023年8月23日21時32分に月の南極点から約600km離れた地点(南緯約69度・東経約32度付近)へ着陸することに成功しました。
インドとしては初めて、世界でも4か国目の月面着陸成功で、月の南極付近への着陸は世界初です。
https://sorae.info/wp-content/uploads/2023/08/Chandrayaan3-rover-ramped-down-from-lander-and-move-ISRO.mp4【▲ チャンドラヤーン3号のランダーに搭載されていたローバーがランプ(傾斜路)を下りて月面を走行し始めた様子(Credit: ISRO)】
チャンドラヤーン3号のローバーは着陸から間もなくランダーから降ろされ、月面での行動を開始しました。ISROによると、ローバーの走行距離は2023年9月2日までに合計100mを超えています。
また、2023年9月3日にはランダーによる“ホップ実験(hop experiment)”が実施されました。この実験は将来のサンプルリターンや有人ミッションを見越して実施されたもので、ランダーのエンジンを噴射して約40cm上昇させた後に、30~40cm離れた位置へ再び着陸させることに成功したということです。
https://sorae.info/wp-content/uploads/2023/09/Chandrayaan3-lander-hop-ISRO-lFi8tuFbp0fOaj6P.mp4【▲ チャンドラヤーン3号のランダーによるホップ実験中の様子をランダーのカメラで撮影した動画(Credit: ISRO)】
ISROによると、チャンドラヤーン3号のランダーとローバーはミッションを完了し、2023年9月4日までにスリープモードに入りました。同ミッションでは太陽電池から電力を得ているため、月の夜間にバッテリーを充電することはできません。ローバーは日の出の方向へ太陽電池を向けた状態で駐車されているといい、着陸地点が夜明けを迎える2023年9月22日頃にランダーとローバーが目覚めることを願っているとISROは述べています。
【特集】インドの月探査ミッション「チャンドラヤーン3号」
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Image Credit: ISRO, NASA's Goddard Space Flight Center/Arizona State University NASA - NASA’s LRO Observes Chandrayaan-3 Landing Site ISRO - Chandrayaan-3 ISRO (X, fka Twitter)文/sorae編集部