アメリカ航空宇宙局(NASA)のジョンソン宇宙センター(テキサス州ヒューストン)では、小惑星探査ミッション「OSIRIS-REx(オシリス・レックス、オサイリス・レックス)」で地球に持ち帰られた小惑星「101955 Bennu(ベンヌ、ベヌー)」のサンプルを容器から取り出す作業が始まっています。現地時間9月26日にはBennuに触れた探査機ロボットアームの先端部分が姿を見せるとともに、容器の内部に付着した黒いダスト(塵)も確認されました。【2023年9月27日12時】
「アメリカ版はやぶさ」とも呼ばれるOSIRIS-RExの探査機は2016年9月に打ち上げられ、2018年12月に小惑星「101955 Bennu(ベンヌ、ベヌー)」に到着。周回軌道上からの観測を重ねた後の2020年10月に表面からのサンプル採取を実施し、2021年5月にBennuを出発してからは地球を目指して飛行を続けました。
Bennuのサンプルを収めた回収カプセルは、日本時間2023年9月24日19時42分に探査機本体から分離されて地球の大気圏に再突入し、日本時間同日23時52分に米国ユタ州のユタ試験訓練場へ着陸することに成功。現地時間9月24日のうちにヘリコプターで訓練場に輸送されたカプセルは、クリーンルームへ運び込まれて処理が施された後で空輸され、日本時間2023年9月26日にジョンソン宇宙センターに到着していました。
関連:小惑星のサンプルを収めた容器がジョンソン宇宙センターに到着 NASA「OSIRIS-REx」ミッション続報(2023年9月26日)
日本時間2020年10月21日に採取されたBennuのサンプルは、OSIRIS-REx探査機のサンプル採取装置「TAGSAM(Touch-And-Go Sample Acquisition Mechanism)」の中に入っています。TAGSAMは平べったい円筒型のカゴのような姿をした装置で、サンプル採集時には探査機のロボットアーム先端に取り付けられていました。
【▲ OSIRIS-RExのカメラ「SamCam」で撮影されたサンプル採取前後5分間の画像から作成されたアニメーション(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)】
サンプルの採取当日、探査機はロボットアームを伸ばしてBennuの表面へと降下。先端のTAGSAMが接触すると同時に窒素ガスを噴射させることで、表面から舞い上がった物質をTAGSAMの内部に捉えました。NASAによると、OSIRIS-RExミッションでは少なくとも60グラムのサンプルを持ち帰る計画でしたが、実際に採取されたサンプルは計画を上回る約250グラムと推定されています。
【▲ TAGSAMの展開、サンプルの採取、回収カプセルへの収納を説明したイメージ動画(Credit: NASA Goddard)】
TAGSAMはサンプル採取後の2023年10月30日に回収カプセル内部のサンプル容器に収容されました。それから3年近くが経った2023年9月24日に回収カプセルが地球へ帰還。TAGSAMを収めたサンプル容器はユタ試験訓練場のクリーンルームで回収カプセルから取り出され、その翌日にジョンソン宇宙センターに運び込まれています。
ジョンソン宇宙センターのOSIRIS-RExミッション専用クリーンルームでは、現地時間2023年9月26日にサンプル容器のフタを取り外す作業がキュレーションチームによって行われました。グローブボックスでフタが外された容器の中からは計画以上のサンプルが入っているとみられるTAGSAMと、容器の内部に付着した黒いダストが姿を現しています。公開された画像を見ると、TAGSAMの表面だけでなく、アルミニウム製のフタと容器が接していた部分を縁取るようにしてダストが付着している様子がわかります。
NASAによると、容器から取り外されたTAGSAMは窒素ガスを充填した密閉コンテナに一旦収められ、別のグローブボックスに移した上で慎重な分解作業が続けられます。また、世界に向けてBennuのサンプルを公開する特別なライブ配信が日本時間2023年10月12日0時から行われるということです。
Source
Image Credit: NASA, NASA Goddard, University of Arizona NASA - OSIRIS-REx Mission (NASA Blogs)文/sorae編集部