ロシアの宇宙機関ロスコスモス(Roscosmos)とアメリカ航空宇宙局(NASA)は日本時間10月10日付で、国際宇宙ステーション(ISS)のロシア区画で冷却剤が漏れているのが確認されたと発表しました。現在ISSには宇宙航空研究開発機構(JAXA)の古川聡宇宙飛行士ら7名が滞在していますが、クルーが危険にさらされることはなかったとされています。【2023年10月10日10時】
冷却剤の漏洩が確認されたのは、ロシア区画を構成する多目的実験モジュール「ナウカ(Nauka)」に2つ備わっているラジエーターの1つ(補助ラジエーター)です。NASAによると、日本時間2023年10月10日2時頃、ISSの外部カメラで捉えた映像を見たジョンソン宇宙センターの管制官がナウカのラジエーターから薄片状の物質が放出されているのを発見。ISSに漏洩の可能性を伝えたところ、NASAのジャスミン・モグベリ(Jasmin Moghbeli)宇宙飛行士が観測用モジュール「Cupola(キューポラ)」の窓を通して物質の存在を確認したため、汚染に対する予防措置としてアメリカ側区画の窓のシャッターを閉めるように指示が出されました。
NASAやロスコスモスによると、ナウカの主ラジエーターは正常に動作しており、クルーやISSの運用に影響することなくモジュールを冷却しているとされています。冷却剤が漏洩した原因については調査が進められており、新たな情報は提供可能になり次第発表されるということです。
2年前の2021年7月に打ち上げられてISSに結合されたナウカ(露:Наука)は、ロシア語で「科学」を意味するその名が示すように船内と船外での科学実験に対応しており、実験装置などを出し入れできる小型のエアロックや欧州で開発された「欧州ロボットアーム(ERA:European Robotic Arm)」を備えています。
今回冷却剤が漏洩した補助ラジエーターは、小型エアロックのチャンバーなど一部の機器類とともにロシア区画の小型研究モジュール「ラスヴェット(Rassvet)」の外面に取り付けた状態で先行して打ち上げられ、2010年5月から保管されていました。ナウカへの取り付けは補助ラジエーターのISS到着からほぼ13年が経った2023年4月の船外活動で行われています。
ISSではロシアの宇宙船やモジュールからの冷却剤漏洩が相次いでいます。2022年12月には宇宙船「ソユーズMS-22」から冷却剤が漏洩し、クルーの帰還に使わないことになったため、代わりに次の宇宙船「ソユーズMS-23」が無人で打ち上げられました。2023年2月には補給船「プログレスMS-21」でも同様の冷却剤漏洩が起きています。ロスコスモスはソユーズMS-22やプログレスMS-21の外装に生じた穴とされる画像を公開しており、微小隕石の衝突によってラジエーターが損傷した可能性に言及しています。
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また、冷却剤の漏洩ではありませんが、ISS到着直後の日本時間2021年7月30日未明にはナウカのスラスターが誤って噴射され、ISSの姿勢制御が一時失われる事態も発生しました。原因はソフトウェアの不具合とされています。
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ナウカモジュールからの冷却剤漏洩については新しい情報が入り次第お伝えします。
Source
NASA - International Space Station Operations Update Roscosmos (Telegram)文/sorae編集部