アメリカ航空宇宙局(NASA)は10月20日、小惑星探査ミッション「OSIRIS-REx(オシリス・レックス、オサイリス・レックス)」で地球に持ち帰られた小惑星「101955 Bennu(ベンヌ、ベヌー)」のサンプルについて、キュレーションチームによって収集されたサンプルの重量が70.3グラムに達したことを発表しました。OSIRIS-RExミッションは少なくとも60グラムのサンプル採取という目標を達成したことになります。【2023年10月26日10時】
2016年9月に打ち上げられたOSIRIS-REx探査機は2018年12月にベンヌに到着。周回軌道上からの観測を重ねた後の日本時間2020年10月21日に表面からのサンプル採取を実施し、2021年5月にベンヌを出発しました。サンプルを収めた回収カプセルは日本時間2023年9月24日に探査機本体から分離されて地球の大気圏に再突入し、日本時間同日23時52分に米国ユタ州のユタ試験訓練場へ着陸することに成功しています。
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サンプルの採取当日、探査機はサンプル採取装置「TAGSAM(Touch-And-Go Sample Acquisition Mechanism)」を先端に備えたロボットアームを伸ばしてベンヌに向けて降下。採取装置が表面に接触した瞬間に窒素ガスを噴射することで、舞い上がった物質を採取装置の内部に捉えました。採取装置は2020年10月30日にロボットアームから切り離され、回収カプセル内部のサンプル容器に収容。2023年9月26日にジョンソン宇宙センターのクリーンルームで開封作業が行われるまで、採取装置は3年近くサンプル容器に保管されていました。
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前述の通りOSIRIS-RExミッションでは少なくとも60グラムのサンプル採取を目標としていましたが、実際に採取されたサンプルはその4倍に上る約250グラムと予測されています(サンプル採取前後のロボットアームの動きを比較して推定)。2023年10月20日の発表時点では合計70.3グラムが収集されましたが、採取装置の中に入っているサンプルの大部分ははまだ取り出せていないようです。
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NASAによると、採取装置のフタを開けるには35個の留具を外す必要がありますが、クリーンルームのグローブボックスで使用が承認されていた工具ではそのうちの2個を外すことができなかったといいます。一部のサンプルは採取装置内部のフラップ(フタ)を押し下げながらピンセットやスコップで取り出すことに成功しており、フラップを通り抜けていた石やサンプル容器の内側に付着していたダスト(塵)なども含めて合計60グラム以上が収集されましたが、装置の中にはその3倍ほどのサンプルが残っていると推定されます。
サンプルの収集を進めているキュレーションチームは今後、収集済みサンプルの処理と並行して、残りのサンプルの状態を保ちつつ採取装置から取り出す方法の開発と実践に取り組むということです。
【▲ 参考:OSIRIS-REx探査機のサンプル採取装置「TAGSAM」によるサンプル採取から回収カプセル収納までの過程を示した動画】
0:24~0:30のシーンにて赤色の直線2本で描かれている部品が採取装置内部のフラップ
(Credit: NASA Goddard)
Source
NASA - OSIRIS-REx Mission (NASA Blogs)文/sorae編集部