こちらは「ペルセウス座」の方向約2億4000万光年先の「ペルセウス座銀河団(Perseus Cluster)」です。欧州宇宙機関(ESA)によると、ここにはペルセウス座銀河団に属する1000個の銀河と、その向こう側に存在する10万個以上の銀河が写っているといいます。それぞれの銀河が最大数千億個もの星々で構成されていることを思うと気が遠くなりそうです。
この画像はESAの「Euclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡」の「可視光観測装置(VIS)」と「近赤外線分光光度計(NISP)」で取得したデータをもとに作成されました。Euclidは可視光線だけでなく人の目では捉えられない赤外線の波長でも観測を行うため、画像の色はデータ取得時の波長に応じて着色されています(700nm付近を青、1.1μm付近を緑、1.7μm付近を赤で着色)。
2023年7月に打ち上げられたばかりのEuclidは、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)や暗黒物質(ダークマター)の謎に迫ることを目的に開発されました。ESAによると、画像に写っている背景の銀河のうち5万個以上はペルセウス座銀河団の質量がもたらす弱い重力レンズ効果(※)の研究に利用できるといいます。銀河団の形成には電磁波では直接観測できない暗黒物質が重要な役割を果たしたと考えられており、弱い重力レンズ効果の観測は銀河団の内部や宇宙全体における暗黒物質の分布を間接的に知ることにつながります。
冒頭の画像はEuclidミッションにおける初のフルカラー画像の一つとして、ESAから2023年11月7日付で公開されました。Euclidは最終的にこの画像の3万倍の広さに渡る数十億個の銀河を画像化することになるといいます。暗黒物質が形成したと考えられている宇宙の大規模構造に沿って分布する銀河の立体地図をEuclidの観測データをもとに作成することで、宇宙の膨張を加速させていると考えられている暗黒エネルギーについての理解も深まると期待されています。
■脚注
※…重力レンズとは、手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間が歪み、その向こう側にある天体(光源)から発せられた光の進行方向が変化することで、地球からは像が歪んだり拡大して見えたりする現象のこと。像の歪みや増光が大きい場合は「強い重力レンズ効果」、小さい場合は「弱い重力レンズ効果」とも呼ばれます。
Source
ESA - Euclid’s view of the Perseus cluster of galaxies文/sorae編集部