アメリカの民間宇宙企業シエラ・スペース社は2023年11月2日、同社が開発を進めてきたスペースプレーン「Dream Chaser(ドリームチェイサー)」の初号機が完成したと発表しました。
ドリームチェイサーは有翼式の宇宙往還機で、米国コロラド州にあるシエラ・スペースの工場で組み立てが行われました。シエラ・スペースによると、初号機は「Tenacity(テナシティー、“ねばり強さ”の意味)」と命名されています。完成したドリームチェイサー初号機は数週間のうちに米国オハイオ州にあるアメリカ航空宇宙局(NASA)のニール・A・アームストロング試験施設へと送られ、環境試験が実施される予定です。
シエラ・スペースはアメリカ航空宇宙局(NASA)との間で商業輸送サービス2(CRS-2)の契約を締結しており、ドリームチェイサーはスペースXの補給船「Cargo Dragon(カーゴドラゴン)」などと同様に国際宇宙ステーション(ISS)への物資輸送に用いられます。海上に着水するカプセル式のカーゴドラゴンとは違い、有翼式のドリームチェイサーはNASAが運用していたスペースシャトルのようにケネディ宇宙センター打ち上げ着陸施設(旧シャトル着陸施設)の滑走路へ滑空して着陸することができます。機体の再利用にも対応しており、帰還後に再整備を行うことで15回の使用が可能だということです。
ドリームチェイサー初号機はケネディ宇宙センターからユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の新型ロケット「Vulcan(バルカン、ヴァルカン)」2号機のミッションで打ち上げられる予定です。打ち上げの予定日時は明らかにされていませんが、海外メディアのSpaceNewsは早くても2024年春頃と報じています。ULAはヴァルカン初号機の打ち上げを2023年12月24日以降に予定しており、ドリームチェイサーの打ち上げスケジュールも現時点では不透明な状況です。
ドリームチェイサーは日本とも関わりがあり、2022年2月にはドリーム・チェイサーのアジア拠点として大分空港の活用を検討するパートナーシップが大分県、兼松株式会社、シエラ・スペースの間で締結されました。同年12月には日本航空株式会社(JAL)も参入しています。このパートナーシップを通して、大分空港はドリームチェイサーのアジアにおける着陸拠点となることを目指しています。
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Source
Sierra Space - Today Sierra Space Introduces Tenacity SpaceNews - Sierra Space completes first Dream Chaser文/出口隼詩 編集/sorae編集部