2024年6月、「マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁判大会」アジア・太平洋予選が東京の学習院大学(豊島区目白)で開かれます。
アジア・太平洋予選では、中国、シンガポール、インドなどのアジア各国から、国際法や宇宙開発に興味のある学生が参加します。模擬裁判を行う日本の学生にとっては、日本にいながらにしてアジア各国の学生と弁論できる貴重なチャンスです。
しかし、宇宙開発に興味や関心を持っていたとしても、「宇宙法模擬裁判」について知らない方もいるでしょう。本記事は宇宙法模擬裁判を取材した筆者による連載記事の第1回として、「宇宙法模擬裁判とは何か?」について迫ります。
<宇宙法模擬裁判とは?>宇宙法模擬裁判は、法的思考力や議論を行う実践型の教育として普及した国際法模擬裁判の一種です。国際法模擬裁判は、架空の国家間紛争が発生したとき、両国の主張を国際司法裁判所(ICJ)に提出し、原告・被告を務める代理人の学生が議論を展開する設定で行われます。宇宙法模擬裁判も同じ形式で実施されますが、宇宙空間における事件や事故がテーマとなり、国際法だけでなく、宇宙法の知識も必要となります。
模擬裁判に出場するチームは、大学生や大学院生で成り立っています。出場時には、双方の国家がICJに提訴したと仮定して行われます。事前に公開された問題文(コンプロミ)をもとに、チームは原告と被告それぞれの立場から国際法や国際宇宙法などに基づいて論を組み立て、裁判官へ提出する書面(メモリアル)の作成と法廷での弁論を通じて、勝敗を争います。
学術的に新たな論点が問題文に盛り込まれている点が模擬裁判の面白さであり、一種の醍醐味でもあります。2024年は、「漆黒で静寂な空の保護と科学探査の自由に関する事件」と題されています。問題文では、通信衛星コンステレーションの1機が制御を失い、別の宇宙機関が打ち上げた宇宙望遠鏡と衝突してしまったケースが取り上げられています。このように、現時点では実際に起こる可能性が低いものの、将来的に課題となりそうな事象を取り上げるのが特徴です。
<宇宙法模擬裁判の歴史>宇宙法模擬裁判は、1992年にアメリカで始まりました。翌年には、ICJ裁判長だったマンフレッド・ラクス判事の功績を記念して、「マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁判大会」と呼ばれるようになりました。
1993年にはヨーロッパ予選、2000年にはアジア太平洋予選、2011年にはアフリカ予選が次々と開設され、大会の存在は世界中に広がっていきました。現在では、アフリカ、アジア太平洋、北アメリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパの5つの地域で予選が行われており、その優勝者は世界大会である決勝に進出できます。
<宇宙法模擬裁判大会について>世界大会は、国際法に関心のある人と宇宙開発に興味のある人の双方にとって良いポイントがあります。まず、世界大会の裁判官役はICJの裁判官が務めます。国際法を勉強している学生にとって、ICJの裁判官と弁論できるのは非常に貴重かつ良い機会でしょう。また、世界大会は国際宇宙会議(IAC)と呼ばれる、産官学の宇宙開発関係者が集まる世界最大級の会議と並行して行われます。2024年の世界大会開催地は、IACの開催地でもあるイタリア・ミラノです。宇宙開発に関心のある学生にとって、世界中の宇宙開発従事者と交流できるのは、この上ない経験となるでしょう。
なお、来年のアジア太平洋予選は、2024年6月に開催予定です。すでに申し込みも始まっており、エントリー締め切りは2023年12月31日となっています。詳細は以下からご確認ください。
マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁判大会アジア・太平洋予選は、学習院大学が採択を受けた文部科学省宇宙航空科学技術推進委託費により実施されます。
課題名「宇宙ルール形成に着目した文理融合×産官学連携による人材創造プログラム」
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Image Credit: IISL IISL - MLMC Asia-Pacific Regional Rounds IISL - MLMC 2024 日本宇宙法学生会議 - 宇宙法模擬裁判とは 神戸大学STP - 模擬裁判文/出口隼詩