2024年6月、マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁判大会アジア・太平洋予選が東京・目白の学習院大学で開かれます。予選は2023年も東京で行われており、2年連続して日本で開催されることになります。
2023年のアジア・太平洋予選では、中国、シンガポール、インドなどのアジア各国から、国際法や宇宙開発に興味のある学生が参加しました。
本連載では宇宙法模擬裁判大会について詳しく迫ります。第2回は、2023年に行われたアジア・太平洋予選へ日本チームの一員として出場した早稲田大学法学部2年の中花田武秀(なかはなだ たけひで)さんに、国際法模擬裁判(※)に参加したきっかけや予選当日の様子についてお聞きしました。
※…国際法模擬裁判は、架空の国家間紛争が発生したとき、両国の主張を国際司法裁判所(ICJ)に提出し、原告・被告を務める代理人の学生が議論を展開する設定で行われる。
連載第1回:マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁判大会とは? 2024年アジア・太平洋予選は日本で開催
中花田さんは、2023年アジア・太平洋予選で事前に提出する書面の執筆と弁論を担当しました。予選当日は、上位になったチームと弁論することになり、英語力や主張を伝えようとするスキルの高さに驚いたといいます。
国際法模擬裁判や宇宙法との出会いは、所属している早稲田大学国際法研究会だったとのこと。国際法模擬裁判は「法的思考力を学び、英語を使う力にひかれた。特に英語を使う力を身につけたかった」ため、参加したといいます。しかし、マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁判大会アジア太平洋予選大会は、特に宇宙法の要素が大きい国際法模擬裁判だったため、宇宙法は一から勉強したそう。宇宙法は「これからの伸びしろがある。未開拓の部分が多いため、切り開いていける」と熱く語ります。
大会に出場するチームの学生は、全国各地の大学から集まりました。そのため、学生同士の距離も物理的に離れており、当日までオンラインで活動することが多かったということです。
そうした制限のある状況でも、書面の執筆や弁論の練習など行うべきことは山積みのうえ、学生ひとりひとりの知識に差があることも事実。中花田さんは「一人一人持っている能力が異なる。そこをうまく合わせてチームとして前に進めていくのが難しかった」と振り返ります。
そして迎えた弁論の当日は「かなり緊張した」と中花田さん。アジア予選大会は全てのやりとりが英語で行われますが、「英語を使う力を身につけたかった」と前向きです。さらに、「海外のチームは弁論のスキルが高く、英語を使って議論を組み立てる力が試されている。彼らはわかりやすく説得力のある議論を作っていくスキルがある」と当日を振り返りました。
英語を使った弁論は、「このような機会がないと英語力は伸びない。最初はハードルが非常に高いと感じ、自信もないがやっていくうちに自信がついてくる」と、経験の大切さを説いています。
弁論では、裁判官から突然質問が飛んでくることも少なくありません。そんな時、「さまざまな角度からの切り返しが重要になる」といいます。中花田さんは「リサーチ力と組み立てる力、コミュニケーション力が重要。相手の言っていることを論理的に理解し、整理して、確実に伝えていく。裁判官からの質問に対してうまく切り返して説得させられるか」がカギだと述べます。書面執筆から弁論当日まで時間が限られるなかで、これらの力を使ってやることはかなり得るものも多いでしょう。
中花田さんは、これまでの国際法の学びと今回の大会を通して「国際的な交流に興味をもち、留学に行きたい」と今後の展望を語りました。さらに、「模擬裁判は教育分野で世界的に評価が高い。国際大会に出場した経験があれば、国際的なキャリアにもつながっていくのではないか」と話しました。将来は国際機関での職につきたいという夢もあり、国際法や模擬裁判の経験が今後のキャリア形成に影響を与えていることも伺えます。
模擬裁判は、法学部の学生が参加するイメージがあるかもしれません。しかし、中花田さんは、「宇宙法模擬裁判は理系学部に所属している人も興味が持てるかもしれない。法学部に限らず他の学部の人も参加してほしい」といいます。
取材を通して、中花田さんは「コミュニケーション」という言葉を何度も口にしました。模擬裁判では同じチームのメンバーや裁判官との対話や相手に理解してもらうための工夫として、どのようにコミュニケーションをとっていくのかが必要だと感じました。
なお、来年のアジア太平洋予選は、2024年6月に開催予定です。すでに申し込みも始まっており、エントリー締め切りは2023年12月31日となっています。詳細は以下からご確認ください。
マンフレッド・ラクス宇宙法模擬裁判大会アジア・太平洋予選は、学習院大学が採択を受けた文部科学省宇宙航空科学技術推進委託費により実施されます。
課題名「宇宙ルール形成に着目した文理融合×産官学連携による人材創造プログラム」
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Image Credit: IISL文/出口隼詩