こちらは南天にある「とけい座(時計座)」の一角。横一列に並ぶようにして写っている3つの銀河は、右端の一番大きく見えるものが「NGC 1356」、そのすぐ左隣が「LEDA 95415」、少し離れた画像左端のものが「IC 1947」と呼ばれています。さて、3つの銀河のうち、地球から一番近いのはどれだと思いますか?
欧州宇宙機関(ESA)によると、地球からはNGC 1356が約5億5000万光年、そのすぐ隣に写っているLEDA 95415は約8億4000万光年離れています。あと少しで衝突しそうなほど近付いているように見える2つの銀河は、実際には3億光年近い距離に隔てられているのです。一方、2つの銀河から離れて写っているIC 1947までの距離は、地球から約5億光年。つまり、正解はIC 1947ということになります。
この画像の作成には「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」で取得されたデータが用いられています。ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 1356などの観測は、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope:JWST)」やハッブル宇宙望遠鏡自身による将来の詳細な観測の対象になり得る銀河を探す取り組みの一環として2021年3月に実施されたということです。
また、画像の作成にはハッブル宇宙望遠鏡のACSだけでなく、セロ・トロロ汎米天文台のブランコ4m望遠鏡に設置されている「ダークエネルギーカメラ(Dark Energy Camera:DECam)」による光学観測データも使用されています。DECamはその名が示すように暗黒エネルギー(ダークエネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、当初の目的である暗黒エネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。
冒頭の画像は“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”として、ESAから2023年12月25日付で公開されています。
Source
ESA/Hubble - It’s all relative文/sorae編集部