こちらは2023年5月15日から同年6月2日にかけて火星の周回軌道で撮影された4枚の画像を使って作成したアニメーション画像です。中央の明るい点は地球で、左から右へと移動していく暗い点は月。撮影期間が半月間に渡るため、月が地球の周りを半周する様子が捉えられています。
撮影に使用されたのは欧州宇宙機関(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス(Mars Express)」に搭載されている「高解像度ステレオカメラ(HRSC)」です。撮影は2003年6月2日に打ち上げられたマーズ・エクスプレスのミッション開始20周年を記念して実施されました。ESAによると、画像の解像度は1ピクセルあたり約2570km、撮影期間中の地球から火星までの距離は2億7918万6624kmから3億101万6265kmへと変化しました。
マーズ・エクスプレスが地球を撮影したのは今回が初めてではありません。打ち上げから1か月後、2003年7月3日に火星へ向かう途上で振り返るようにして撮影された地球と月の画像が20年前に公開されています。この時の地球からの距離は約800万kmで、陸地や雲といった地表の様子も識別できます。
はるか深宇宙に旅立った探査機のカメラは時折地球を捉えることがあります。世界的に有名なのはアメリカ航空宇宙局(NASA)の惑星探査機「ボイジャー1号(Voyager 1)」が1990年2月14日に撮影した地球の画像でしょう。
木星と土星の接近観測を終えて太陽系の外へと飛び続けるボイジャー1号は探査機の寿命を延ばすためにカメラをシャットダウンすることになりましたが、当時ボイジャー計画に携わっていた天文学者のカール・セーガン博士はその前に太陽系の各惑星を収めた「太陽系の家族写真(Family Portrait of the Solar System)」の撮影を提案しました。実際に撮影できたのは9惑星(当時)のうち6つで、地球が写った1枚は「ペイル・ブルー・ドット(Pale Blue Dot:淡く青い点)」として知られることになります。
関連記事:宇宙に浮かぶ”点”の様な地球。ボイジャーが60億km先から撮影した「ペイル・ブルー・ドット」(2020年2月14日)
マーズ・エクスプレスのチームの一員であり、打ち上げ20周年という特別な機会にあわせて冒頭のアニメーション画像を作成したバスク大学/ソルボンヌ大学のJorge Hernández Bernalさんは、生命の存在が唯一知られている地球を振り返り、互いを思いやることの責任を強調し、人類の故郷である地球の保護に気を配るというカール・セーガン博士の思いを、気候の悪化と生態系の危機に直面する現在に復活させたかったと振り返ります。
「私たちはペイル・ブルー・ドットに気を配らなければなりません、代わりは存在しないのですから」(Hernández Bernalさん)
冒頭のアニメーション画像はESAから2023年7月12日付で公開されたもので、ESAのX(旧Twitter)公式アカウントが2023年12月28日に改めて紹介しています。
https://twitter.com/esa/status/1740024746840842478
Source
ESA - Earth and Moon seen from Mars文/sorae編集部