アメリカの民間宇宙企業スペースXは日本時間2024年1月4日、スウェーデンの衛星通信企業オブゾン(Ovzon、オフゾン)の通信衛星「Ovzon 3」を搭載した「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功しました。
Ovzon 3を搭載したファルコン9は日本時間2024年1月4日8時4分(米国東部標準時2024年1月3日18時4分)、米国フロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地第40発射施設から打ち上げられました。スペースXによると、発射39分後にOvzon 3の分離に成功したということです。
ファルコン9の第1段機体は今回が10回目の使用で、発射8分後に基地内の着陸エリアへ帰還しました。今回使用された第1段機体は2022年11月26日に実施された国際宇宙ステーション(ISS)への補給ミッション「CRS-26」で初飛行して以来、2023年1月10日に実施された衛星通信会社OneWeb(ワンウェブ)の通信衛星打ち上げ、2023年4月7日に実施された通信衛星会社Intelsat(インテルサット)の通信衛星「Intelsat 40e」打ち上げ、2023年11月13日に実施された通信衛星会社SESの通信衛星「O3b mPower 5&6」打ち上げ、5回の「スターリンク」打ち上げで使用されました。
Ovzon 3はスウェーデンの静止軌道通信衛星で、アメリカの民間企業マクサー・テクノロジーズ(Maxar Technologies)によって製作されました。Ovzon 3は可動できるスポットビームを通じて地球の3分の1をカバーできる能力を持つとされています。Ovzonは主に政府カスタマーに対してブロードバンドサービスを提供する企業です。海外メディアのSpaceflight Nowは同社の主要取引先について米国国防総省(DoD)と述べています。
SpaceNewsによると、Ovzon 3は今後数か月かけて東経59.7度の静止軌道へ衛星自身の推進システムを用いて飛行するということです。Ovzonは衛星の通信サービス投入予定を2024年半ばと発表しています。Ovzon 3の打ち上げ成功について、同社のパー・ノーレン(Per Noren)CEOは「私たちは、Ovzon 3がこれまでに打ち上げられた、初の民間資金で開発されたスウェーデンの静止通信衛星であることを非常に誇りに思っています」とコメントしています。
なお、マクサー・テクノロジーズによると、Ovzon 3には同社の衛星として初めて民間宇宙企業レッドワイヤ(Redwire)が開発した巻取り式の太陽電池アレイ「Roll-Out Solar Array(ROSA)」が使用されています。レッドワイヤによると、ROSAが民間の衛星に搭載されたのは今回が初めてだということです。
Ovzon 3に搭載されたROSAと同じ方式の太陽電池アレイは、ISSにも新型太陽電池アレイ「iROSA(ISS Roll-Out Solar Array)」として6基設置されている他に、アメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星軌道変更ミッション「DART」の探査機にも採用されました。今後はアルテミス計画で建設が予定されている月周回有人拠点「ゲートウェイ」の推進モジュール「PPE(Power and Propulusion Element)」でも使用される予定です。
Source
SpaceX - OVZON 3 MISSION Ovzon - OVZON 3 Scueessful Launch ! Ovzon - Successful launch of Ovzon 3 Ovzon - Ovzon 3 is the first of Ovzon’s revolutionary new class of satellites Maxar Technologies - MAXAR SPACE SYSTEMS-BUILT OVZON 3 SATELLITE LAUNCHED Redwire - Redwire Roll-Out Solar Arrays Successfully Deployed on First Commercial GEO Satellite for Maxar’s Ovzon 3 Mission SpaceNews - SpaceX launches Ovzon’s debut broadband satellite Spaceflight Now - SpaceX Falcon 9 launches Ovzon-3 satellite, kicking off launch year at the Cape文/出口隼詩 編/sorae編集部