三菱重工業は2024年1月12日、「情報収集衛星光学8号機」を搭載した「H-IIA」ロケット48号機の打ち上げに成功しました。
情報収集衛星光学8号機を搭載したH-IIAは、日本時間2024年1月12日13時44分に鹿児島県の種子島宇宙センター大型ロケット発射場から打ち上げられました。同日14時15分には三菱重工業がX(旧Twitter)にて衛星の分離が確認されたと報告しています。
情報収集衛星の運用と開発は内閣衛星情報センターにより行われます。同センターによると、情報収集衛星は外交や防衛などの安全保障分野や災害発生への対応など危機管理時の情報収集として使用されるということです。宇宙政策を担当する内閣府特命担当大臣の高市早苗氏は今回の打ち上げ成功を受けて発表した談話にて「情報収集衛星の体制の整備によって、我が国の情報収集能力が一層強化されることを期待します」と述べています。
情報収集衛星には光学センサーを用いて地上を撮影する「光学衛星」と、レーダーを使用して地上を調べる「レーダ衛星」の2タイプがあり、地球の特定地点を1日1回以上撮影できる能力を持ちます。今回打ち上げられた光学衛星は地上の対象物に反射した太陽光の捉えることで観測を行うため、フルカラーの画像データを利用できる利点があります。そのいっぽうで、夜間や悪天候時の観測はできないという欠点もあります。
今回打ち上げられた光学8号機に関する詳細な情報は公表されていません。内閣衛星情報センターが2017年(平成29年)10月に公開した資料「情報収集衛星に係る平成30年度概算要求について」では、光学8号機は主鏡の大口径化と高精細検出器の採用による光学センサの高性能化と、大型姿勢駆動装置の搭載による俊敏性の確保を実現すると述べられています。
現在運用中の情報収集衛星は「レーダ3号機」「レーダ4号機」「レーダ予備機」「レーダ5号機」「レーダ6号機」「レーダ7号機」「光学5号機」「光学6号機」「光学7号機」「データ中継1号機」です。情報収集衛星の運用に関する計画は政府が5年に一度改訂・発表している「宇宙基本計画工程表」に示されており、基幹衛星(光学+レーダ)4機、時間軸多様化衛星4機、データ中継衛星2機の合計10機体制が目標とされています。
なお、内閣情報調査室は光学8号機打ち上げ前の2024年1月11日に、令和6年能登半島地震(2024年1月1日発生)で被災した地域を情報収集衛星で撮影した画像を公開しました。対象の地域は石川県の珠洲市、七尾市、輪島市、穴水町、能登町などの一部です。公開された画像は情報収集衛星の能力が明らかにならないようにするための加工処理が施されてはいますが、土砂崩落に伴う家屋の損壊、地震の影響による漁港の隆起、津波による被害、火災による被害状況がわかります。
今回打ち上げに使用されたH-IIAは2001年から日本の主力大型ロケットとして使用されてきましたが、新型ロケット「H3」の開発・運用に伴って50号機で運用を終了する予定です。今回は48号機だったので、残る打ち上げはあと2回となりました。
H3ロケット試験機1号機は日本時間2023年3月7日に打ち上げられましたが、2段目の「LE-5B-3」エンジンに点火できず、打ち上げに失敗しました。再挑戦となる試験機2号機の打ち上げは2024年2月15日以降に実施される予定です。
Source
内閣府 - H-IIAロケット 48 号機による 情報収集衛星光学8号機の打上げについて [内閣府特命担当大臣(宇宙政策)談話] 内閣府 - 宇宙基本計画 内閣官房 - 情報収集衛星光学8号機の打上げについて 内閣官房 - 令和6年能登半島地震に係る被災地域に関する加工処理画像について 内閣衛星情報センター - 情報収集衛星に係る 平成30年度概算要求について(平成29年10月) 内閣衛星情報センター - 情報収集衛星に係る令和2年度概算要求について(令和元年10月) 三菱重工業 - H-IIAロケット48号機による情報収集衛星光学8号機の打上げ結果について SPACE SHIFT - 光学衛星とSAR衛星の違い文/出口隼詩 編集/sorae編集部