米国の民間宇宙企業スターラボ・スペース(Starlab Space)は現地時間2024年1月31日、同社の商業宇宙ステーション「Starlab(スターラボ)」の打ち上げにスペースXの「Starship(スターシップ)」を利用すると発表しました。スターラボ・スペースによると、スターラボはスターシップを使えば1回で打ち上げることが可能だということです。
地球低軌道(LEO)に投入される予定のスターラボは微小重力環境を利用した科学実験を行うことが可能で、4名が恒久滞在できるとされています。スターラボ・スペースは具体的な打ち上げ時期を明言していませんが、発表の中で「国際宇宙ステーション(ISS)の運用終了前に打ち上げる予定」と述べています。
アメリカ航空宇宙局(NASA)はISSの運用を2030年に終了し、2031年に大気圏へ突入させて破棄すると発表しています。スターラボ・スペースはISSの運用終了時期に商業宇宙ステーションを打ち上げることで、LEOにおける米国の主導権を継続させる狙いがあると考えられます。
2024年1月に設立されたスターラボ・スペースは、ナノラックス(Nanoracks)を傘下に収める民間宇宙企業ボイジャー・スペース(Voyager Space)とエアバス・ディフェンス・アンド・スペース(Airbus Defence and Space)のジョイントベンチャーです。ボイジャー・スペースはもともとロッキード・マーティン(Lockheed Martin)とスターラボの開発を進めてきました。2021年12月にはブルー・オリジン(Blue Origin)やノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)と並んで、民間の商業宇宙ステーション開発を促進するNASAから開発資金の提供を受ける契約も締結しています。
海外メディアのSpaceNewsによると、その後ボイジャー・スペースはスターラボの開発計画においてロッキード・マーティンとの提携関係を解消し、代わりに2023年1月からはエアバスとともに設計を進めていました。また、2023年10月には独自の宇宙ステーション計画を取りやめたノースロップ・グラマンとボイジャー・スペースの提携も発表されています。ノースロップ・グラマンは現在ISSへの物資輸送に用いている補給船「Cygnus(シグナス)」をベースに、スターラボにドッキングできる補給船を開発する予定です。
ボイジャー・スペースのディラン・テイラー(Dylan Taylor)会長兼CEOはスターシップの選定について「スペースXの成功と信頼性の歴史により、我々のチームがスターシップを選定するに至った」とコメントしています。
スターシップはスペースXが開発中の大型宇宙船です。旅客輸送だけでなく人工衛星や宇宙船などのペイロードを軌道へ打ち上げる能力を持ち、月や火星への飛行も可能とされていますが、現在はまだ開発が進められている段階です。
地球低軌道へペイロードを運ぶスターシップは大型ロケット「スーパーヘビー(Super Heavy)」を結合した2段式形態で打ち上げられます。この形式での試験飛行は2023年4月20日と同年11月18日に実施されましたが、1回目は発射約4分後に飛行中断システムが作動して空中で分解。2回目はスーパーヘビーを分離したスターシップが高度100kmを超えて宇宙空間へ到達したものの、発射約8分後に高度148kmで飛行中断システムが作動して飛行を終えています。
Source
Starlab Space - Starlab Space Selects SpaceX’s Starship for Historic Launch Starlab Space - Voyager Space and Airbus Announce International Partnership for Future Starlab Space Station Starlab Space - Hilton and Voyager Space to Design Crew Lodging and Hospitality Suites Aboard Starlab NASA - NASA Selects Companies to Develop Commercial Destinations in Space SpaceNews - Starlab commercial space station to launch on Starship文/出口隼詩 編集/sorae編集部