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NASAが「宇宙ヨット」向けの次世代技術を実証へ 何が変わる?

sorae.jp 2024年4月26日 10時30分

日本時間2024年4月24日、アメリカ航空宇宙局(NASA)の「Advanced Composite Solar Sail System」と呼ばれるミッションの超小型衛星「ACS3」が、ロケットラボの「Electron(エレクトロン)」ロケットで打ち上げられました。このミッションでは、将来のソーラーセイルに必要な技術をランドセル程度の大きさの人工衛星(12UサイズのCubeSat)に搭載し、宇宙で実証しようとしています。この技術によって、何が変わるのでしょうか?【最終更新:2024年4月24日13時台】

【▲ ソーラーセイルを展開したACS3の想像図(Credit: NASA/Aero Animation/Ben Schweighart)】

ソーラーセイルは、宇宙で広げた帆が太陽光を受けた時に発生する太陽輻射圧を推進力として利用する技術で、「宇宙ヨット」とも呼ばれます。従来の宇宙機で使われてきた重く高価な推進システム(エンジンや推進剤を充填するタンク等)を必要としない点が大きな特徴です。ソーラーセイルを推進システムとして使う利点として、推進剤を使用せずに長期間のミッションを行える点や、ミッションを安価に実施できる点が考えられています。

ソーラーセイルは帆が大きいほど、より多くの太陽光を受けて加速することができますが、その一方で帆を支えるブーム(ヨットで言うマストの部分)の材料や構造に制限がありました。NASAが実証しようとしているブームは柔軟なポリマーや炭素繊維でできていて、硬くて軽いという特徴があります。ACS3に搭載された帆を広げると、その大きさはシングルテニスコートの半分弱(約80平方メートル)にもなります。

【▲ ACS3に搭載されるソーラーセイルの展開試験の様子(Credit: NASA)】

このブームの設計はバスケットコートに匹敵する大きさ(500平方メートル)の帆を支えられる可能性があるといい、ミッションで実証された技術は将来的にサッカーのフィールドの半分程度の大きさ(2000平方メートル)の帆にまで発展できる可能性があるとNASAは説明しています。こうしたソーラーセイルの技術は、近年注目されている宇宙天気の早期警戒衛星に利用することも考えられています。

また、軽量でコンパクトに収納できるという特徴を持つ新しい設計のブームは、ソーラーセイル以外の用途も想定されています。その例として、月や火星で居住地を建設するための建築資材や、月面探査で利用する通信アンテナのポールとして利用する可能性が挙げられています。このように、本ミッションで実証されるソーラーセイル技術は、将来の宇宙開発で幅広く利用される可能性があるのです。

【▲ ACS3プロジェクトの概要を紹介したNASAの動画(英語)】
(Credit: NASA’s Ames Research Center)

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・NASAも注目する「回折式ソーラーセイル」どこが革新的なのか?(2022年7月14日)

 

Source

NASA – NASA Next-Generation Solar Sail Boom Technology Ready for Launch NASA – What is the Advanced Composite Solar Sail System?

文/榊原浩樹 編集/sorae編集部

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