こちらは南天の「とも座(艫座)」の方向約1300光年先の彗星状グロビュール「CG 4」(画像中央)とその周辺の様子です。分子雲から現れた手のようにも見えることから、CG 4は別名「God’s Hand(神の手)」とも呼ばれています。“神の手”はまるで1つの渦巻銀河に向かって伸ばされているように見えますが、「ESO 257-19」と呼ばれるこの銀河はたまたまこの位置に見えているだけで、CG 4よりもさらに1億光年以上離れたところにあります。
彗星状グロビュール(Cometary globule)は、HII領域(※)にみられる孤立した暗黒星雲であるボック・グロビュール(Bok globule)の一種で、尾を伸ばした彗星に似た姿をしていることからそのように呼ばれています。
※…HII(エイチツー)領域:大質量星から放射された紫外線によって電離した水素から赤い光が放たれている領域。電離水素領域とも。
画像を公開した米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、塵(ダスト)が豊富なCG 4の“頭部”の直径は1.5光年、“尾部”の長さは約8光年あります。また、“頭部”の近くには主系列星になる前の若い星(Young Stellar Object: YSO、若い星状天体)も捉えられています。
この画像はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡に設置された観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」の観測データをもとに作成されました。DECamはその名が示すように暗黒エネルギー(ダークエネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、画素数は約520メガピクセル、満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影することができます。当初の目的である暗黒エネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。
冒頭の画像はNOIRLabから2024年5月6日付で公開されています。
Source
NOIRLab – Dark Energy Camera Spies Cometary Globule Reaching for the Stars文・編集/sorae編集部