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【更新】スペースX、新型ロケット「スターシップ」第4回飛行試験を実施へ 早ければ日本時間6月6日夜に

sorae.jp 2024年5月28日 17時42分

アメリカの民間宇宙企業スペースXは2024年5月24日、同社が開発中の新型ロケット「Starship(スターシップ)」による無人での第4回飛行試験を行うと発表しました。Starship第4回飛行試験は早ければアメリカの現地時間で2024年6月6日にも実施される見込みです。【最終更新:2024年6月3日17時台】

【▲ 第4回飛行試験に向けて行われた新型ロケット「Starship(スターシップ)」の打ち上げリハーサル時の様子。スペースXがアメリカの現地時間2024年5月20日に公開(Credit: SpaceX)】

Starshipは1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」と2段目の大型宇宙船「Starship」からなる全長121メートルの再利用型ロケットで、打ち上げシステムとしても「Starship」の名称で呼ばれています。スペースXによれば、両段を再利用する構成では100~150トンのペイロード(搭載物)を打ち上げることが可能であり、2段目のStarship宇宙船は単体でも地球上の2地点間を1時間以内に結ぶ準軌道飛行(サブオービタル飛行)が可能だとされています。

Starshipは米国テキサス州ボカチカにあるスペースXの施設「Starbase(スターベース)」を拠点に開発が進められています。同社は2019年8月から2021年5月にかけてStarship宇宙船の大気圏内飛行試験をStarbaseで数回実施して帰還時の降下姿勢や着陸姿勢を実証した後、2024年3月までにSuper Heavyも含めたStarship打ち上げシステムの無人飛行試験を3回行っています。

【▲ 参考画像:第3回飛行試験で米国テキサス州にあるスペースXの施設「Starbase」から打ち上げられたStarship(Credit: SpaceX)】

2024年3月14日に行われた第3回飛行試験では、Starshipとして初めて上昇時のエンジン燃焼を完了させることに成功。準軌道飛行を行ったStarship宇宙船は発射約46分後にインド洋上空で大気圏に再突入したものの姿勢が安定せず、発射約49分後・高度約65kmでテレメトリ信号が途絶して飛行を終えました。過去3回の飛行試験について詳しくは以下の関連記事をご覧下さい。

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・スペースX、新型ロケット「スターシップ」第3回飛行試験実施 宇宙船は大気圏再突入の段階まで飛行(2024年3月15日)
・スペースX、新型ロケット「スターシップ」第2回飛行試験実施 宇宙船は宇宙空間到達後に喪失か(2023年11月20日)
・スペースX、スターシップの無人飛行試験実施 高度39kmに到達も4分後に飛行中断(2023年4月21日)

スペースXによると、第4回飛行試験の焦点は第3回飛行試験で達成された軌道到達からStarshipの帰還・再利用能力の実証に移り、Starship宇宙船とSuper Heavyには前回の教訓を取り入れた改良が行われました。打ち上げ目標日時はアメリカ中部夏時間2024年6月6日7時(日本時間同日21時)で、約30分前から同社のウェブサイトとXにてライブ配信が行われます。飛行経路は前回と同様で、Super Heavyは発射約7分後にメキシコ湾へ、Starship宇宙船は発射約65分後にインド洋へ着水する予定です。

【▲ 参考画像:第3回飛行試験でSuper Heavyに搭載されていたカメラから最後に送られた映像。スペースXのライブ配信より(Credit: SpaceX)】

Super Heavyは帰還時におけるエンジンの早期燃焼停止や再点火失敗に備えて推進剤のろ過能力が強化されました。Super Heavyに33基搭載されている「Raptor(ラプター)」エンジンのうち、地上へ帰還するためのブーストバック燃焼(飛行経路に対する逆噴射)や着陸燃焼では13基が使用されます。しかし、第3回飛行試験ではブーストバック時に6基のエンジンが早期停止。続く着陸燃焼ではこの6基の始動を試みることができず、残る7基のうち始動に成功したのは2基で、得られた推力は予想を下回りました。最も可能性が高い根本原因は液体酸素のフィルター閉塞とされています。前回の飛行試験でも閉塞の問題を軽減するための変更を施したことで着陸燃焼の段階まで進むことに成功しましたが、第4回以降の試験では機器を追加することでろ過能力がさらに向上するとされています。この他にもエンジン始動の信頼性を高めるためにハードウェアとソフトウェアの変更が施されました。

【▲ 参考画像:第3回飛行試験で発射約46分後、高度100キロメートルを下回った頃のスターシップ宇宙船。スペースXのライブ配信より(Credit: SpaceX)】

Starship宇宙船は姿勢制御の冗長性が強化されました。第3回飛行試験のStarship宇宙船は、高度約150kmで上昇燃焼を完了してから数分後に制御が失われ始め、計画されていた試験の一部(エンジンの軌道上での再点火)を実施できませんでした。また、大気圏再突入時の姿勢も予定通りではなく、耐熱タイルに保護されている腹面だけでなく保護されていない背面も高温にさらされる状態になってしまいました。機体のロールを制御できなかった最も可能性が高い根本原因はバルブの詰まりとみられており、ロール制御用スラスターの追加や閉塞からの復元力を高めるためのハードウェアの改良が施されています。

【▲ 参考画像:第3回飛行試験でStarship宇宙船に搭載されていたカメラが捉えたホットステージングの瞬間。段間の開口部から流れ出た燃焼ガスがSuper Heavyのグリッドフィン付近に見えている。スペースXのライブ配信より(Credit: SpaceX)】

この他にも、第2回飛行試験から導入されたホットステージング用のアダプターを帰還時の重量軽減対策としてSuper Heavyから投棄することを含む、数多くのハードウェアとソフトウェアの改良や運用上の変更が行われたということです。Starshipの実用化に向けてどれほどの前進がみられるのか、第4回飛行試験の結果も注目されます。

【2024年6月3日17時15分更新】スペースXは2024年6月2日、Starship第4回飛行試験の打ち上げについて、規制当局の承認が得られ次第早ければアメリカ中部夏時間2024年6月6日7時(日本時間同日21時)に実施すると発表しました。当初の予定から1日先送りされています(発表にあわせて記事本文とタイトルを更新しました)。

 

Source

SpaceX – Starship’s Fourth Flight Test SpaceX – ON THE PATH TO RAPID REUSABILITY

文・編集/sorae編集部

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