こちらは「オリオン座」の方向約1300光年先の反射星雲「M78(Messier 78)」とその周辺の様子です。画像中央の明るい部分がM78で、その左上に写っている一回り小さな反射星雲は「NGC 2071」と呼ばれています。反射星雲はガスや塵(ダスト)の集まりである分子雲が恒星の光を反射することで輝いて見える星雲です。
この画像は欧州宇宙機関(ESA)の「Euclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡」に搭載されている「可視光観測装置(VIS)」と「近赤外線分光光度計(NISP)」で取得したデータをもとに作成されました。Euclid宇宙望遠鏡は可視光線だけでなく人の目では捉えられない赤外線の波長でも観測を行うため、画像の色はデータ取得時の波長に応じて着色されています(700nm付近を青、1.1μm付近を緑、1.7μm付近を赤で着色)。
ESAによると、Euclid宇宙望遠鏡は新たな星が生み出される星形成領域として知られるM78を前例のないレベルで観測することに成功しており、分子雲の複雑なフィラメント(ひも状)構造を詳細にマッピングしただけでなく、多数の亜恒星天体(※)を発見しました。Euclidの高感度な観測機器は質量が木星数個分の天体でも検出可能とされており、画像の視野内だけでも30万個以上の天体が新たに見つかったといいます。恒星の集団がどのように形成・変化するのかを理解する鍵となる恒星や亜恒星天体の量と比率を調査するために、研究者はEuclidの観測データを使用しているということです。
※…褐色矮星や惑星質量天体といった、水素の核融合反応が持続する恒星の下限質量を下回る天体。
2023年7月に打ち上げられたEuclid宇宙望遠鏡は、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)や暗黒物質(ダークマター)の謎に迫ることを目的に開発されました。数十億個の銀河の画像化を目指すEuclidの観測データをもとに、暗黒物質が形成したと考えられている宇宙の大規模構造に沿って分布する銀河の立体地図を作成することで、宇宙の膨張を加速させていると考えられている暗黒エネルギーについての理解も深まると期待されています。
冒頭の画像はESAから2024年5月23日付で公開されました。
Source
ESA – Euclid’s new image of star-forming region Messier 78文・編集/sorae編集部