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2024年7月の星空情報 はくちょう座χ星が極大

sorae.jp 2024年7月2日 17時3分

7月、梅雨が明ければ季節は間もなく真夏となります。夜も蒸し暑さが残る時期ですが、あでやかな1等星をつなぐように天の川がきらめく、美しい夜空が見られます。

東の空を見上げると、3つの白い1等星がやや細長い三角形を描いています。夏の空の目印である「夏の大三角」です。
大三角の中で1番明るい星が「こと座」のベガです。7月、東の空を正面にして見上げると、最も高い位置にあります。
ベガの南側にある星が「わし座」のアルタイル、北側の星が「はくちょう座」のデネブです。

夏の大三角から低い方へ目を移すと、「へびつかい座」があります。へびつかい座の最も明るい星は2等星のラサルハグェ(蛇を採る者の頭)です。ラサルハグェ、ベガ、アルタイルを結び合わせると、夏の大三角とは線対称の三角形が描けます。

【▲ 2024年7月中旬 21時頃の東京の星空(Credit: 国立天文台)】

ラサルハグェを頂点とした、将棋の駒に例えられる下方が膨らんだ五角形が、へびつかい座の星の並びです。へびつかい座はギリシャ神話一の名医であるアスクレーピオスが描かれた星座といわれています。

へびつかい座が手に持つのは「へび座」です。へび座はへびつかい座によって頭部・尾部に分断されています。

アスクレピオスが蛇を持っているのは、蛇が薬草を使って死んだ仲間の蛇を生き返らせるところを目にしたことで、蘇生の術を知ったためであるといわれています。

現代においても蛇は医学のシンボルです。蛇が杖に巻き付いた意匠の「アスクレピオスの杖」は世界保健機関(WTO)のマークになっている他に、救急車の車体にも描かれています。

へびつかい座の足元には「さそり座」があります。南の空低いところに浮かぶ赤い1等星アンタレスを中心としたS字カーブが目印です。肉眼で見やすい3等星以上の星が15個もあり、全天でも特に明るく見つけやすい星座です。

さそり座の尾のあたりが天の川の最も濃い部分です。天の川はへびつかい座の東をすりぬけ、夏の大三角を貫いて北の方へと伸びています。南北に架け渡されたアーチのような天の川を見られるのも、7月の星空の醍醐味です。町明かりの少ない、空の澄んだ場所で探してみましょう。

■はくちょう座χ星の極大

2024年7月20日頃、はくちょう座χ(カイ)星が極大を迎えます。はくちょう座の首に位置する4等星(η星)の付近にあるはくちょう座χ星は脈動変光星のひとつで、年老いた星が膨張と収縮を繰り返すことで約409日周期で明るさが変わります。変光範囲は3.3~14.2等級、2万倍以上ものダイナミックな変光を見せる星です。

【▲ はくちょう座とはくちょう座χ星の解説図(Credit: USM, Redshift, Edit: sorae)】

とはいえ、毎回必ず3.3等級まで光度が上がるわけではありません。2024年の極大時では4等級まで増光するとの予報もありますが、極大の明るさや極大日は予測が難しく、予報とズレが生じることも少なくありません。

2024年ははくちょう座の見やすい時期に極大を迎えるため、観測の好機です。毎日はくちょう座を眺めていれば、χ星の増光が分かるかもしれません。この機会に明るさの変わるふしぎな星、はくちょう座χ星をご覧ください。

 

 

Source

Image Credit: 国立天文台, sorae, USM 国立天文台 – 東京の星空・カレンダー・惑星(2024年7月) Wikipedia – はくちょう座カイ星 AstroArts – 2024年7月の天文現象カレンダー
つるちゃんのプラネタリウム – はくちょう座χ星が極大の頃 2024年7月20日 阿南市科学センター/天文館blog – 世にも奇妙な星(1)
奥三河星空コラム – 2024年 注目の天文現象
天文年鑑2024 – 天文年鑑編集委員会編著 誠文堂新光社

文・編集/sorae編集部

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