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NASAが2030年で運用を終えるISSの軌道離脱用宇宙機開発でスペースXと契約

sorae.jp 2024年6月27日 17時35分

アメリカ航空宇宙局(NASA)は2024年6月26日付で、2030年に運用を終える国際宇宙ステーション(ISS)を大気圏へ再突入させるための宇宙機「U.S. Deorbit Vehicle(米国軌道離脱機)」の開発を担当する企業としてアメリカの民間企業SpaceX(スペースX)を選定したことを発表しました。【最終更新:2024年6月27日11時台】

【▲ 国際宇宙ステーション(ISS)の外観。2021年11月撮影(Credit: NASA)】

1998年11月に最初の構成要素が打ち上げられたISSは、2024年で建設開始から26年、宇宙飛行士の長期滞在開始から24年を迎えます。NASAをはじめ、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)、ヨーロッパの欧州宇宙機関(ESA)、カナダのカナダ宇宙庁(CSA)、ロシアのロスコスモス(Roscosmos)が運用に関わるISSでは、地球・宇宙科学、生物学、人類生物学、物理科学、地上では行えない技術実証といったさまざまな実験が宇宙飛行士によって行われてきました。

しかし、2011年に主な構成要素の組み立てが完了したISSでは、与圧モジュールからの空気漏れや太陽電池の発電能力低下といった経年劣化の影響がすでに現れています。2021年から2023年にかけて新型太陽電池アレイの増設が行われるなど対策は講じられているものの、ISSの運用は2030年に終了する予定です。

ISSが周回している高度約400kmの地球低軌道では希薄な大気によるごくわずかな抵抗を受けるので、ISSは放置しておいてもいずれ大気圏に再突入します。ですが、それではいつどこで再突入するのかがわかりませんし、トラスのように高密度で耐熱性がある構成要素の一部は地表へ到達して被害をもたらす可能性があります。また、地球低軌道に残されている間はスペースデブリ(宇宙ごみ)と衝突するリスクがあり、他の宇宙船や人工衛星にとって危険なデブリがISSから生み出されてしまう可能性も否定できません。

【▲ アメリカの民間企業Maxar Technologiesが2024年6月に同社の衛星を使って撮影した国際宇宙ステーション(ISS)の画像(Credit: Maxar Technologies)】

そこでNASAは、運用終了後のISSを制御された方法で大気圏へ再突入させ、人口密集地から遠く離れた海へ落下させて廃棄する計画を立てています。この方法は再突入能力を持たない無人補給船やペイロード(搭載物)分離後のロケット上段を軌道から離脱させて廃棄する方法と基本的に同じですが、質量430トンを上回るとされるISSを減速して軌道から離脱させるのは簡単ではありません。NASAはISSのリブースト(軌道上昇)に使用されているロシアの補給船「Progress(プログレス)」を複数使用する方法などを検討しましたが、ISSの安全な廃棄を実現するには大量の推進剤を搭載した専用の宇宙機を用意する必要があるという結論に達し、調達するための計画を進めていました。

今回NASAがSpaceXと交わした契約は8億4300万ドル規模で、SpaceXは軌道離脱機の開発と提供を担当します。NASAは提供された軌道離脱機を運用して、ISSの制御された廃棄を実行する予定です。

なお、アメリカでは複数の民間企業が地球低軌道に商業宇宙ステーションを建設する計画を表明しています。ISS運用終了後のNASAは月・火星有人探査に重点を置き、地球低軌道では顧客のひとつとして商業宇宙ステーションを利用する見通しです。

 

Source

NASA – NASA Selects International Space Station US Deorbit Vehicle NASA – FAQs : The International Space Station Transition Plan

文・編集/sorae編集部

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