宇宙航空研究開発機構(JAXA)と欧州宇宙機関(ESA)は2024年6月27日付で、1か月ほど前に打ち上げられた雲エアロゾル放射ミッションの地球観測衛星「EarthCARE」に搭載されている「雲プロファイリングレーダー(CPR)」の初観測で取得した画像を公開しました。【最終更新:2024年6月28日10時台】
日本時間2024年5月29日に打ち上げられたEarthCAREは、ESAとJAXAが共同で開発し、運用する地球観測衛星です。日本での愛称は「はくりゅう(白龍)」です(※外観が白く、展開された太陽電池パドルが長い尾を連想させることから)。ミッションの目的は、気候変動予測の精度向上に貢献するための雲とエアロゾルの全地球的な観測を行うこと。観測機器は4つ搭載されており、そのうちの1つであるCPRはJAXAと情報通信研究機構(NICT)が共同で開発し、日本電気(NEC)が設計・製造を担当しました。
こちらが今回公開された画像の1つです。日本時間2024年6月13日13時36分頃に日本の東海上にあった梅雨前線上の雲をCPRで捉えたもので、左は雲粒の垂直方向の濃度を示すレーダーの反射強度、右は雲粒の上下の動きを示すドップラー速度をそれぞれ示しており、気象衛星「ひまわり9号」の観測データを利用して3次元的に表現されています。JAXAによると、宇宙から雲の上下の動きを梅雨前線上の雲域で測定したのは世界初とされています。
次に示すのは「ひまわり9号」で撮影された観測当日の雲画像および実況天気図、それにCPRの観測で得られたレーダー反射強度とドップラー速度のデータを示した図です。雲画像と実況天気図に書き込まれた赤色の線はEarthCAREの通過軌道を示しており、CPRのデータは点Aから点Bの範囲を観測して得たものとなります。
CPRが観測した範囲の南側(図の左側)約300kmでは発達した雲構造が上空約13kmに達しており、そこから上層雲が北側(図の右側)へ向かって広がっている様子が捉えられています。また、ドップラー速度のデータを見ると、高度約5kmを境に上の高さでは上下の動きがほとんどみられない(緑色)一方で、下の高さではドップラー速度が下向きに高くなっている(青色)こともわかります。気象庁の予報モデルで算出された気温0℃の高さが約5kmであることから、下向きに高いドップラー速度の特徴は雨滴の落下速度を示していると考えられています。なお、発表の時点でCPRは初期機能の確認中であり、観測値が校正されていないことから、観測値の指標には数値が入れられていません。
今後、JAXAはCPRの観測データを用いた研究を大学や研究機関と共同で進めることで、雲が気候変動に影響する仕組みを解明し、気象予測や気候予測の精度向上に貢献することを目指すということです。
Source
JAXA – 雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)搭載 雲プロファイリングレーダ(CPR)の初観測画像を公開 ESA – A first: EarthCARE reveals inner secrets of clouds文・編集/sorae編集部