こちらはアメリカ航空宇宙局(NASA)の火星探査車「Perseverance(パーシビアランス)」に搭載されているカメラ「Mastcam-Z」で撮影されたパノラマです。2024年9月27日に撮影された44枚の画像をつなぎ合わせて作成されたもので、NASAのジェット推進研究所(JPL)から2024年10月28日付で公開されています。
NASAの火星探査ミッション「Mars 2020(マーズ2020)」の探査車として日本時間2021年2月19日朝に火星のジェゼロ・クレーター(Jezero、直径約47km)へ着陸したPerseveranceは、2024年12月初旬にクレーターの西縁を越えることを目指して急勾配の斜面を登っています。今回公開されたパノラマはその途中で撮影されました。
JPLによると、Perseveranceの着陸地点やミッションで初めて堆積岩が発見された場所、サンプルを収めた保管容器を配置した場所、ともに火星へ着陸した火星ヘリコプター「Ingenuity(インジェニュイティ)」がミッションを終えた最後の着陸地点など、3年半にわたる探査活動中の出来事やランドマークがこの1枚のパノラマに収められているといいます。
【▲ 火星探査車「Perseverance」の2021年2月から2024年10月までの移動経路を示した動画】
(Credit: NASA/JPL-Caltech)
Perseveranceの副プロジェクトマネージャーを務めるJPLのRick Welchさんは「この画像は過去と現在だけでなく、私たちが目指す未来の大きな課題も示している」とコメントしています。パノラマ画像の右側に一部が写っている斜面の角度は約20度。Perseveranceはこれまでにも同じくらいの斜面を登ったことがあるといいますが、ここは塵や砂がゆるく堆積しているために滑りやすく、ある数日間は滑りにくい場所と比べて半分の距離しか進むことができず、別の日には計画されたルートの20%ほどしか進めなかったといいます。
滑りの影響を低減させるため、Perseveranceの運用チームは「車体を後進させる(※)」「ジグザグに走行させる」「ルートの北端に接近させる」という3通りの方法をテスト。どの方法も効果はあったものの、ルートの北端に近づく方法が最も効果的だったことがわかったといいます。この違いは地表付近の岩石が生じさせたのではないかと考えられています。
※…Perseveranceのサスペンションは特定の条件下では後退させた時により良いトラクションを維持することが地上試験でわかっているため。
予定通りならあと数週間でクレーターの縁を越えるPerseveranceは、クレーターの内部にいた頃と同様にサンプルを採取し、容器に収めて保管します。NASAは欧州宇宙機関(ESA)と共同で火星サンプルリターンミッションを計画・実施しており、Perseveranceが採取したサンプルは将来のミッションで回収されて地球へ運ばれる予定です。
Source
NASA/JPL - NASA’s Perseverance Rover Looks Back While Climbing Slippery Slope文・編集/sorae編集部
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最終更新日:2024/11/04