ヨーロッパの宇宙企業Arianespace(アリアンスペース)は2024年11月8日付で、新型ロケット「Ariane 6(アリアン6)」の2号機の打ち上げを2025年2月中旬に予定していることを発表しました。
それによると、Ariane 6ロケット2号機の1段目と2段目はフランスとドイツにあるArianeGroup(アリアングループ)の施設でそれぞれ統合作業が進められており、近いうちにギアナ宇宙センターがあるフランス領ギアナに向けて輸送されます。2024年7月に実施された初号機の飛行で得られたデータをもとに、2段目のAPU(Auxiliary Propulsion Unit: 補助推進装置、またはAuxiliary Power Unit: 補助動力装置)を再点火して2段目機体を軌道から離脱させるためのソフトウェアの修正が完了したということです。
なお、Ariane 6ロケット2号機にはフランス軍の光学衛星「CSO-3」がペイロードとして搭載されます。フランス国立宇宙研究センター(CNES)によると、CSOは3機の衛星が異なる高度の極軌道に投入され、作戦区域をカバーする偵察ミッション(高度800km)や、可能な限り高い解像度・品質・分析精度の画像を提供する識別ミッション(高度480km)を遂行するということです。
Ariane 6は2023年7月まで運用されていた「Ariane 5」の後継にあたるロケットです。1段目には「Vulcain(バルカン、ヴァルカン)」エンジン1基、2段目には「Vinci(ビンチ、ヴィンチ)」エンジン1基を搭載。機体構成は固体燃料ロケットブースター「P120」を1段目の側面に2基備えた「Ariane 62」と、4基備えた「Ariane 64」の2種類が用意されています。地球低軌道(LEO)への打ち上げ能力はAriane 62が10.3トン、Ariane 64が21.6トン。静止トランスファー軌道(GTO)への打ち上げ能力はAriane 62が4.5トン、Ariane 64が11.5トンとされています。
初号機は軌道に到達も2段目の制御落下を実行できず日本時間2024年7月10日に打ち上げられたAriane 6ロケット初号機は軌道に到達し、ペイロードとして搭載されていた超小型衛星の放出に成功したものの、APUに問題が生じたため、2段目を制御落下させるための3回目のエンジン燃焼は実行できませんでした。ArianeGroupによると、APUの主な役割は推進剤タンクの加圧ですが、浮遊する推進剤をエンジンの再点火時にタンクの底へ集めるための加速度を生じさせたり、必要に応じて推力を追加させたりする役割もあります。
この問題について海外メディアのSpaceNewsは、2024年9月中旬に行われたArianespaceのStéphane Israël(ステファン・イズラエル)CEOの会見での言葉を伝えています。それによると、エンジン燃焼前に始動するはずだった2段目のAPUが、温度の測定値の1つが制限を超えたために始動できなかったと結論付けられており、ソフトウェアを変更することで修正できるとIsraël氏は述べたということです。
関連記事
・欧州の新型ロケット「アリアン6」初打ち上げ 軌道到達と超小型衛星放出に成功(2024年7月10日)
Source
Arianespace - Ariane 6 first commercial flight scheduled for early 2025 CNES - CSO / MUSIS SpaceNews - Next Ariane 6 launch slips to early 2025文・編集/sorae編集部
#アリアン6 #アリアンスペース