こちらの画像、下に写っているのは「うみへび座(海蛇座)」の方向約6億2200万光年先の銀河「LEDA 803211」。中央部分の明るい棒状構造を青色に彩られた渦巻腕(渦状腕)が取り囲んでいる様子がよくわかります。しかしそれよりも気になるのは、上に写っているリング状の天体ではないでしょうか。
欧州宇宙機関(ESA)によると、このリングはビッグバンから25億年後、今から110億年以上も前に存在していた銀河の輝き。リングの中央に写っている楕円銀河による重力レンズ効果を受けたことで、地球からはこのような姿に見えているのだといいます。
重力レンズ効果とは、手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間がゆがむことで、その向こう側にある天体(光源)から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像がゆがんだり拡大して見えたり、時には分裂して見えたりする現象のこと。
画像の場合、遠方の銀河と地球の間にたまたま楕円銀河が位置しているため、地球からは遠方銀河の像がリング状にゆがんで見えています。重力レンズ効果によってリング状になった天体の像は、一般相対性理論にもとづいてこの効果を予言したアルベルト・アインシュタインにちなんで「アインシュタインリング」と呼ばれることもあります。
冒頭の画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」で2022年2月に取得したデータを使って作成されたもので、ESAから2025年最初の“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”として2025年1月6日付で公開されています。ちなみに1年前に公開された同シリーズ2024年最初の画像も重力レンズ効果を受けてリング状になった銀河の姿でした、是非見比べてみて下さい。
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した“くじら座”のアインシュタインリング(2024年1月7日) ビッグバン理論とは何か? 宇宙誕生と膨張の証拠をわかりやすく解説
Source
ESA/Hubble - Ringing in the new year文・編集/sorae編集部