こちらは「かじき座(旗魚座)」の方向約16万光年先にある輝線星雲「かじき座30(30 Doradus)」の外縁部分の一部。天空にかけられた赤と白のベールを透かして星々を眺めているような美しさを感じます。
この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得した観測データを使って作成されました。かじき座30という名前は聞き馴染みがないかもしれませんが、「タランチュラ星雲(Tarantula nebula)」と言えばご存知の方も多いのではないでしょうか。
タランチュラ星雲は天の川銀河の伴銀河(衛星銀河)のひとつ「大マゼラン雲」(Large Magellanic Cloud: LMC、大マゼラン銀河とも)にあります。欧州宇宙機関(ESA)によれば大マゼラン雲の質量は天の川銀河の10~20%ですが、新たな星を生み出す星形成領域が幾つも存在しています。タランチュラ星雲もそんな星形成領域のひとつで、中心部分では太陽の200倍以上もの質量を持つ大質量星が発見されています。
タランチュラ星雲には星の材料となるガスとともに、塵(ダスト)も多く集まっています。塵には可視光線……特に波長が短い青色光を吸収・散乱しやすい性質があるため、塵の多い環境にある星は実際よりも赤っぽい色で観測されます。そんな塵を含む星雲の観測を通じた塵の粒子の研究は、新しい恒星や惑星が形成される上で塵が果たす役割を理解する上で役立つということです。
冒頭の画像は“ハッブル宇宙望遠鏡の今週の画像”としてESAから2025年1月20日付で公開されています。
Source
ESA/Hubble - A Tarantula’s outskirts文・編集/sorae編集部