アメリカの宇宙開発企業ブルー・オリジンの代表であり、通販会社アマゾンのCEOでもあるジェフ・ベゾス氏は2016年9月12日、超大型ロケット「ニュー・グレン」を発表した。
現時点ではイラストのみで公式な詳細情報は確認できないが、アメリカ史上最大のロケット「サターンV」よりやや小さく、現在アメリカで最大の「デルタ4ヘビー」より大きい超大型ロケットで、第1段はスペースXのファルコン9ロケットのように垂直着陸して再使用する模様だ。
謎多きブルー・オリジン
ブルーオリジンは2000年に起業した宇宙開発企業だが、華々しく開発の様子をアピールし人工衛星打ち上げも進めてきたスペースXとは対照的に、その活動は断片的にしか公開されてこなかったが、着実に技術開発を進めてきたものと思われる。2015年以降は弾道飛行(宇宙空間に達するが、地球周回軌道に乗らずに落下する)宇宙観光機「ニュー・シェパード」の試験飛行を公開したほか、ULA社の次世代ロケット「バルカン」の第1段エンジンの候補のひとつにブルーオリジンの提案が採用されるなど、急に頭角を現していた。
そして、スペースXがロケット爆発で打ち上げを中止しているこのタイミングで、超大型ロケット「ニュー・グレン」を発表した。ちなみにシェパードはアメリカ人初の宇宙弾道飛行を行った宇宙飛行士アラン・シェパード、グレンはアメリカ人初の軌道周回飛行を行った宇宙飛行士ジョン・グレンから命名されている。
「ニュー・グレン」は、大型の再使用型第1段には「バルカン」用の、メタン燃料を使用するBE-4エンジンを7基搭載。そこにBE-4を使用する第2段を載せたタイプと、さらに液体水素を使用する第3段を載せたタイプが図示されている。いずれもきわめて大型で、現在打ち上げられているような大きさの人工衛星打ち上げだけに用いるには明らかに過大であることから、宇宙ステーションや月・惑星探査などを視野に入れていると思われる。
いずれにせよ、「ニュー・シェパード」の実用化もされていない段階では「ニュー・グレン」はあまりにも飛躍があり、すぐに開発着手されるとは考えにくい。しかし、このようなロケットの構想を発表したということは、大型民間宇宙ステーションなどを見据えた宇宙開発ビジョンが、ベゾス氏の頭にあるということだろう。
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