中国貴州省で7月に建設工事が完了した、500メートル球面電波望遠鏡(Five-hundred-meter Aperture Spherical radio Telescope、FAST)。観測開始へ向けて、機能の調整や点検作業が進められてきましたが、いよいよ9月25日から観測運用が始まります。同形式の電波望遠鏡としては、プエルトリコにあるアレシボ天文台の305mを抜いて世界一の大きさを誇るFAST望遠鏡ですが、どのような観測を行うのでしょうか。
「ぐるりと鍋を回すように」観測方向を変える
FAST望遠鏡は4,450枚の三角形のパネルで構成される、直径500メートルに及ぶ主鏡が大きな特徴です。実際には、地面から140メートルの高さに吊り上げられた受信部へ、宇宙からの電波を反射するための有効直径は300メートルとされています。
この主鏡は、地面から伸びる約2400本のワイヤーで固定されていて、ワイヤーの張り具合を変化させることで反射面の向きを変える仕組みになっています。この動きと連動させて、上空に吊り下げた受信部を移動させることで、パラボラアンテナが首を振って向きを変えるのと同じ役割を果たします。
目的は宇宙人を探すこと?
FAST望遠鏡の建設工事が基本的に完了した7月には、「宇宙人探査も可能」と観測目的を紹介する報道がされていました。確かに、FAST望遠鏡の基礎科学ミッションの一つには地球外知的生命体探査(SETI)も含まれており、その部分がクローズアップされていたように思います。
SETIの観測にあたっては、中性水素原子から発する21cmスペクトル線が主にその対象とされています。FAST望遠鏡でもこの水素線の観測を行いますが、その目的は宇宙人を探すこと、だけではありません。
星系形成の仕組みやダークマター分布、パルサー観測も
FAST望遠鏡では21cm水素線観測や中性水素原子ガスの分布観測のほか、ヒドロキシ基、メタノールなどのスペクトル線観測を通じて、星系形成のしくみやダークマターの分布を解き明かすことも期待されています。
このほか、新たなパルサーの発見も目指しています。9月17日に行っていた試験観測で、地球から1351光年の距離にあるパルサーの電波をとらえたことが中国メディアで報じられており、パルサー発見に必要な機能が正常に作動していることがうかがえます。
宇宙へ向けて開かれた「天の眼」がぎょろりと睨みを利かせ、どんな発見をするのか、これからの観測成果が期待されます。
Image Credit: 平塘県人民政府