先月末、ヨーロッパの無人探査機ロゼッタがチェリモフ・ゲラシメンコ彗星に衝突という形でミッションを終え、大きなニュースになりました。またアニメ映画「君の名は。」でも彗星が物語の大きなカギをにぎっていますね。
そこで今回はそんな時の人、彗星にスポットライトを当ててみました。古くから美しくも不吉の象徴とされてきた彼ら。その正体にせまります。
彗星とはなんだ~宇宙を飛ぶ“汚い雪だるま”?~
彗星は太陽系を作っている天体の一つであり、小惑星などと同じ「太陽系小天体」と呼ばれるものです。彼らはぼんやり光る頭と2本の尾を持っていますが、その正体を彗星の原料から順にみていきましょう。
彗星の中心には固まりがあり、これを「核」と呼びます。成分は主に氷と二酸化炭素で、その他にガスや塵(ダスト)が固まってできています。そのためよく「汚れた雪だるま」に例えられます。この「核」は太陽に近づくと太陽の熱で蒸発してガスになり、一部は発光します。これを「コマ」と言い、地球からはぼんやり光る頭に見えるのです。
さて、太陽からは電気的なとても高速の風が吹いているのですが、「コマ」のガスの一部はこの風の影響を受けてどんどん吹き流されてしまいます。こうして太陽と反対側に尾が一つできるのです(=「イオンの尾」)。
またガスと一緒に小さい塵も「核」から出ていきますが、塵も太陽の力を受けて太陽と反対方向へ流されてしまいます。こうしてできたもう一つの尾を「塵の尾」と言います。この尾は太陽光が反射してよく輝くうえ幅広くなりやすく、これがほうきに見えるので彗星は昔から「ほうき星」とも呼ばれています。
彗星はどこから来るのか?~彗星の“ふるさと”とは~
彗星も軌道や周期を持っており、大きく2種類に分けられます。
一つめは長周期彗星と呼ばれるもので、周期が200年以上のものです。また軌道が双曲線や放物線で一度しか太陽に接近しないものもこれに分類されます。二つめは短周期彗星と呼ばれ、周期が200年以内のものです。
長周期彗星グループは「オールトの雲」、短周期彗星グループは「エッジワース・カイパーベルト」というところからやってくると考えられています。
「オールトの雲」は太陽系の最外部、「エッジワース・カイパーベルト」は海王星よりも外側にある、太陽系ができたときに惑星になり切れなかった氷や塵の固まりが集まっている場所です。
これらのかたまりが惑星の引力など何らかの力によって引っ張られ、太陽や地球のそばへ飛んでくるものが彗星なのです。
彗星と流れ星~流星群が見られるのは彗星のおかげ?~
流星は、宇宙の塵が大気圏内で高温になり光っているものです。つまり流星群は宇宙の塵が大量に大気圏に飛び込んでくる現象と言えますが、実は流星群を生みだしているのも彗星なのです。
彗星は最初で触れたように、塵を吐き出しながら飛んでいます。この吐き出された塵の中で粒が大きいものはその彗星の軌道上に集まります。これを「ダストトレイル」と言います。地球が彗星の塵だらけの軌道を通過するとき、その日時は毎年ほぼ同じです。そのため毎年決まった時期に大量の塵が大気圏に飛び込んでくるので流星群が見られるのです。
彗星は地球に接近すると1か月ほどその輝きを楽しむことができます。彗星の明るさ、見え方の予測は難しいのでどれほど輝くかはいざ接近しないと分かりませんが、今年の大みそかに一つ、そして来年もいくつか明るい彗星が見られるようです。
今月も空を見上げましょう!
Image Credit: 国立天文台、角谷杏季