宇宙には複数の恒星がお互いの周りを公転している「恒星系」という天体があります。これらには2つの恒星による連星系や複数の恒星による多重星系に別れるのですが、今回観測されたのは3つの恒星からなる誕生過程の三重星系「L1448 IRS3B」です。このように、誕生過程の多重星系が観測されたのは今回が初めてとなります。
今回の観測はチリ・アタカマ砂漠にある電波干渉計「ALMA」によって行われました。画像からは、2つの若い恒星が古い恒星を回りながら形成されていることがわかります。そしてこれは、恒星系の伴星が「原始惑星系円盤」から誕生するという以前より提唱されていた説を裏付けるものとなります。
原始惑星系円盤とは新しい恒星の周りを取り巻く円盤状のガスで、その中では重たい雲が衝突を繰り返すことにより密度と温度が上昇していきます。すると最終的に核反応が起き、新たな恒星が誕生するのです。またその星の誕生過程では原始惑星系円盤の崩壊があると想定されており、今回はその過程を観測することに成功したのです。
マサチューセッツ大学のStella Offner助教授は、「これは恒星系の誕生過程で何が起きているのかを初めて捉えたものです」と語っています。さらに宇宙には膨大な数の恒星系が存在しており(なんと恒星の半分は連星系!)、今回の発見からその誕生の仕組みが解き明かされるかもしれません。
なお、私達の太陽系は恒星を一つしか持っていません。これは、原始惑星系円盤だったころにその質量があまり大きくなかった可能性があります。今後も研究者たちは宇宙の数多くの恒星系を観測することにより、将来的には太陽系の誕生の仕組みの解明につながることを期待しているのです。
Image Credit: NRAO/AUI/NSF
■Astronomers capture birth of triple-star system
http://www.theverge.com/2016/10/26/13408790/multiple-star-system-birth-formation-theory-proven?utm_source=rss&utm_medium=rss