まだまだ多くの謎が残る月について、新たな研究成果が発表されました。
NASAとブラウン大学の科学者らが、2011年に打ち上げられたNASAの月周回探査機「グレイル」のデータから38億年前のクレーターの形成を説明したモデルを発表しました。この発表は28日付の米サイエンス誌に掲載されています。
今回の研究の対象となったクレーターは、月の「東の海(マレオリエンタレ)」です。これは3重になった同心円状の岩のリングがある、特徴的なクレーターです。しかし長年、3重のリングがどのようにできたのかが謎のままでした。研究チームはグレイルのデータから、マレオリエンタレの表面下の構造を明らかにしました。
月周回機グレイルは、2機の周回機が連携して月の重力分布を測定する探査機です。2011年9月に打ち上げられたグレイルは、2012年1月に観測を始め、同年12月には月面に制御落下し、運用を終了しました。
隕石による大きな衝突が起きると、表面はその余波で反動を起こします。そして、最初に衝突してできた地形を消してしまうのです。研究チームはグレイルのデータから、表面下に埋もれた最初の衝突の痕跡を見つけることに成功しました。
3つのリングは、以下の過程で形成されたと説明されました。まず隕石の衝突によって熱く柔らかい岩石が、反動を起こして衝突でできた凹地の中心に向かって流動します。すると流動した岩石が大きな隙間と崖を作り、外側の2つのリングができたのです。このとき、凹地は岩石で埋もれました。また、中央で溶けた岩が外に流れ、内側のもう一つのリングが形成されました。このような過程で形成されたマレオリエンタレは、衝突後のわずか数分間で形成されたことがわかっています。
今後は火星などにおけるリング構造の研究に、このモデルを利用することが期待されています。「グレイルによる多くのデータのおかげで、これらの凹地が形成について私たちは理解が可能になりました。他の惑星と衛星のクレーターにも、その知識を使うことができるでしょう」と、ブラウン大学の地質学者Brandon Johnsonは記者発表で説明しています。
Image Credit: NASA
■New study explains moon’s ringed crater
http://www.upi.com/Science_News/2016/10/27/New-study-explains-moons-ringed-crater/5541477594499/?utm_source=rss&utm_medium=rss