新シリーズの拡充を進めている中国の長征ロケット、これまでに小型クラスで新型液体燃料エンジンを搭載した長征六号と新型固体燃料ロケットの長征十一号が、中型クラスでは同じく新型液体燃料エンジンで構成された長征七号がすでに打ち上げられています。このラインアップに、「大型」の長征五号ロケットが加わることになりました。日本時間11月3日午後7時、中国海南省文昌市の文昌宇宙センターから打ち上げられます、
長征五号ロケットは中国が新開発した次世代ロケットの一つです。全高約57メートルで、低軌道に25トンの打ち上げ能力を持ち、コアステージ(ロケット第一段)の直径は長征ロケットシリーズでも最大となる5メートル。日本のH-IIBロケットが全高約57メートル、第一段の直径が5.2メートルですから、それに匹敵する大きさです。
大型クラスとしては、長征五号はH-IIBロケットのほか、欧州のアリアン5、アメリカのデルタIVやアトラスVなどに比肩する機体、という事になります。海外の大型ロケット市場に参入しうるロケットを保有することで、「宇宙強国」を目指す中国の存在をアピールできる、というところでしょうか。
長征七号に引き続き、長征五号でも新技術を続々採用しています。メインエンジンには新開発の液体酸素/液体水素エンジン。さらに、長征六号で初使用され、七号にも採用されている新型の液体酸素/ケロシンエンジンはブースター用のエンジンとして搭載と、新型エンジン2種で構成されています。どちらも従来の有毒燃料(ヒドラジン)に代わって、「無毒無害」の燃料を採用しているということから、中国では環境に優しいロケットエンジンとして紹介されています。
衛星を周回軌道に投入する重要な役割を果たすのは、これまた新型の遠征二号。上段ステージ「遠征」は、複数の人工衛星を別々の軌道に投入するために開発され、中国ではスペースタグボートとも呼ばれているエンジンです。今回の長征五号/遠征二号では、現時点で実践十七号と呼ばれる人工衛星の打ち上げが公表されています。
今年打ち上げた長征七号では遠征一号甲(YZ-1A)が、実に4機の衛星、1機の大気圏再突入カプセル試験機、1つの実験機器を搭載し、複数回の軌道変更、カプセル分離のための降下から再上昇、軌道上での長期間運用など複雑なミッションをこなしてみせました。遠征二号も同様に高精度のマニューバが可能とみられ、その運用が注目されます。
中国は現在、独自の宇宙ステーション建設を進めています。その先駆けとなる「宇宙実験室」天宮一号、二号には打ち上げ専用の長征二号F改良型を使用しましたが、正式な宇宙ステーションの構成モジュール群を打上げるには、大推力大容量のロケットが必要となります。
また、宇宙探査にも注力しており、月探査計画「嫦娥」や火星探査計画、小惑星探査計画を推進するためにも、「より遠く」を目指す能力を有するロケットが必要で、長征五号はその一翼を担う事になります。さらに、中国では現在、長征五号を上回る超大型ロケット「長征九号」の開発を進めており、その直径は長征五号のさらに倍となる10メートルといわれています。
長征五号の打ち上げは日が暮れてから。長征七号も夜の打ち上げでしたが、夜空を切り裂いて昇っていくロケットの姿を楽しむ観光客らで、「中国のハワイ」と呼ばれる海南島の浜辺がまた賑わうことでしょう。
Image Credit: CASC,CALT
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