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「反ヘリウム」初めて自然界で検出か 宇宙の「暗黒物質」解明に期待

sorae.jp 2016年12月11日 9時3分

 

物質と衝突すると双方が消滅してしまう反物質の「反ヘリウム」とみられる物質を検出したと、スイスの欧州合同原子核研究所(CERN)が12月8日に発表しました。結果が本物であれば、世界で初めて自然界で反物質を検出したことになります。今回AMSで検出された可能性がある反ヘリウムは反陽子2個と反中性子1個で構成され、重さはヘリウムとほぼ同じです。

 

研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されている「アルファ磁気分光器」(AMS-02)を用いて、2011年から5年間観測。そして合計で900億個超の粒子を分析したところ、数個の反ヘリウムと思われる粒子が発見されたのです。

 

なお、AMSは、ISSに搭載されている機器の中でも最大の科学観測装置です。ネオジム磁石が搭載されており、その強力な磁場で宇宙線を集めることができます。また2012年の時点で、電子の反粒子である陽電子の観測に成功していました。

 

物質は「電子」「陽子」「中性子」から構成されていて、反物質はこれらとは反対の性質を持つ「陽電子」「反陽子」「反中性子」から構成されています。ビックバンが起きた直後は物質と反物質が存在し、互いに打ち消し合っていましたが、何らかの理由で物質の数が勝り、反物質は消えてしまいました。消滅せずに残った物質が現在の宇宙を構成していると言われています。映画・小説の『天使と悪魔』にも登場したことから、こちらで反物質を知った方も多いのではないでしょうか。

 

なぜ宇宙から消えてしまったはずの反物質の観測が行われているのでしょうか。それは、宇宙の3割ほどを占める未知の物質である「暗黒物質」が互いに衝突したときに、反陽子などが発生するとされているからです。反ヘリウムは反陽子から構成されているため、検出されたものが反ヘリウムだった場合、暗黒物質が存在する証拠の一つになる可能性があります。

 

1995年にはCERNで反水素、2011年には米国のブルックヘブン国立研究所(BNL)で反ヘリウム原子核を作りだすことに成功しています。このように反物質は人工的には作製されてきましたが、自然界では検出されていませんでした。今後もさらにデータを集め、分析が行われていきます。

 

Image:NASA
■The First Five Years of the Alpha Magnetic Spectrometer on the International Space Station
http://www.ams02.org/2016/12/the-first-five-years-of-the-alpha-magnetic-spectrometer-on-the-international-space-station/?utm_source=rss&utm_medium=rss
■アルファ磁気スペクトロメータ(AMS-02)
http://iss.jaxa.jp/iss/ulf6/mission/payload/ams02/?utm_source=rss&utm_medium=rss

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