以前にもNASAは初の次世代大型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」とオリオン宇宙船の打ち上げに宇宙飛行士搭乗を検討中だと発表しましたが、いよいよ協議が本格化してきました。トランプ米大統領のチームはNASAに対し、初の同ロケット/宇宙船打ち上げと月往復ミッションへの宇宙飛行士の搭乗を検討するように伝えているのです。
当初、初のSLSとオリオン宇宙船の打ち上げミッション「EM-1」は2018年11月に行われる予定でした。そして月を周回しながら宇宙船の強度などを確認し、地球に帰還。次回の有人ミッション「EM-2」へとデータが活かされるはずでした。「EM-2」の予定時期は2021年。しかしトランプ政権は、この計画を前倒ししようとしているのです。
現在NASAはこの要請を受けて、2人の宇宙飛行士を搭乗させた場合のリスク、あるいはベネフィットを試算しています。またNASAは報道陣向けのテレカンファレンスにて、「この計画の前倒しに賛成の立場を表明しなかった」ことを明かしています。計画の前倒しはもちろんリスクを伴うのですが、まず1日ほど宇宙船に地球を周回せて生命維持装置の動作を確認し、リスクを抑える方法もあるそうです。ただしいずれの方法にしろ、NASAにとっては懸念をはらむものとなりそうです。
今回のNASAによる協議はおよそ1ヶ月後に結果が出されます。宇宙飛行士を搭乗させた場合の打ち上げ時期は2019年に遅れることが予測されますが、それでも間に合わない場合は当初の「EM-2」と同じく2021年に打ち上げが行われます。だったら最初から無人の「EM-1」を2018年に、有人の「EM-2」を2021年にすればいいのでは、という声も聞こえてきそうですが……。
トランプ大統領がなぜこのような要望を出したのかについては、1期目(2017年〜2021年)に成果を残したいからだ、という見方もあります。安全第一が原則のはずの宇宙開発ですが、この先どう状況が変化するのでしょうか。
Image Credit: NASA
■NASA officials discuss Trump’s push for first-term moon mission
https://www.washingtonpost.com/news/speaking-of-science/wp/2017/02/24/nasa-officials-discuss-trumps-push-for-first-term-moon-mission/?utm_source=rss&utm_medium=rss
■NASA Kicks off Study to Add Crew to First Flight of Orion, SLS as Progress Continues to Send Humans to Deep Space
https://www.nasa.gov/feature/nasa-kicks-off-study-to-add-crew-to-first-flight-of-orion-sls-as-progress-continues-to-send?utm_source=rss&utm_medium=rss