現在人類は太陽系惑星への移住を考慮に入れる段階にまできましたが、そこで気になるのが生殖。きちんと子どもが作れるかどうかで、将来の移住計画の姿も大きく変わってくるはずです。そんななか山梨大学やJAXAの研究グループは、日本実験棟「きぼう」で長期保存したマウス精子から健康な産仔が作出できたと発表しました。
今回の研究は、山梨大学の大学院総合研究部発生工学研究センターの若山清香特任助教、若山照彦教授とJAXAの矢野幸子主任研究開発員によって発表されました。研究では、ISS(国際宇宙ステーション)に接続されたきぼうで、フリーズドライ精子を9ヶ月長期保存。そして地上に回収し、発生させたのです。
すると宇宙放射線は精子DNAにダメージを与えることが判明。しかし受精や発生には影響を与えないことも同時にわかりました。これについて、研究発表では「卵子が持つDNA修復能により、精子DNA損傷が受精後に修復されたのでは」と解説しています。一方、畜産業などで精子をより長期間保存する場合には、よりDNA損傷に関する研究が必要だとしています。
このように、短期間の保存なら健全な発生が可能だった冷凍精子。研究はマウスで行われたものですが、人間の精子もどれくらいの期間安全に保存できるのか、なかなか興味深いですね。
Image Credit: 山梨大学
■国際宇宙ステーションの「きぼう」で長期保存した精子 DNA の正常性と宇宙マウス について -人類の宇宙生殖の可能性を示す-
http://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~twakayama/LSHP/research3.html