アニメなどで今年大ブレイクした「けものフレンズ」のキャラクターたちを機体全体にあしらった「痛飛行機」が日本各地を行脚している。ハンドルネーム「空飛ぶたぬき」さん(本業はパイロット学校の教官)個人のプロジェクトで、クラウドファンディングで実現した。
本日(記事公開日)12月1日から3日にかけては、オープンしたばかりの「あいち航空ミュージアム」のオープニングイベントとして公開される予定だ。この「けもふれ痛飛行機」を間近で見ることができたので、ご紹介しよう。なお取材の際は場所の都合で非公開だったが、「あいち航空ミュージアム」では機体に近付いたり機内を見たりできるそうだ。
非公式飛来にファンと「たぬきのフレンズ」集まる
11月10日午後。埼玉県桶川市のホンダエアポートに「けもフレ痛飛行機」が飛来した。5日には神戸空港の「空の日イベント」で公開されたが、関東にはイベント開催に適した飛行場が少なく、ホンダエアポートには公開イベントではなく通常の寄港となっている。しかし、飛行予定を知った関東のファン30名ほどが、ホンダエアポートで出迎えた。そして「けもフレ痛飛行機」が着陸すると偶然、地元の野生たぬきが飛行場に現れた。空飛ぶたぬきさんと、夢の共演となった。
空飛ぶたぬきさんによるとこの飛行機、PA-46「パイパーマリブ」は他の方の個人所有機で、レンタル費用は飛行1時間あたり12万円(燃料費込み)。空飛ぶたぬきさん自身の手で操縦はもちろん、日々の点検や燃料の管理も行っている。クラウドファンディングによりこれらに必要な諸経費276万円(11月15日現在)が集まった。このほか、宿泊費などは空飛ぶたぬきさんが自腹を切っている。
人気アニメ「けものフレンズ」をあしらった痛飛行機だが、もともとけものフレンズに決まっていたわけではないという。空飛ぶたぬきさんは先にアニメ「エロマンガ先生」の企画でラッピング飛行機を飛ばした経験から、飛行機に身近に接した子供も大人も楽しそうにするのを見て、このプロジェクトを発案した。「けものフレンズ」が選ばれたのは、この作品がもともと二次創作を歓迎していたため。機体に貼るイラストもネットで募集し、空飛ぶたぬきさんのイメージに近かったというハンドルネーム「らず子」さんが全て描き起こした。
らず子さんによると、イラストを描くにあたっては「けものフレンズのファンはアニメの絵柄に愛着があると思うので、そのイメージを崩さないことを大切にしました」とのこと。また、東武動物公園でフンボルトペンギンのフレンズ「フルル」のパネルの前から離れず「恋するペンギン」と話題になった、フンボルトペンギン(本物)のグレープ君が10月に亡くなったことから今回のフライトは「グレープ君追悼フライト」と銘打たれており、グレープ君もフルルと一緒に埼玉の空を舞った。
楽しんでくれれば「してやったり」
空飛ぶたぬきさんはこれまでの公開の感触をこう語る。
「見た人はみんな、思わずニヤッとするんですよ。飛行機を個人所有するオーナーさんは年配の社長さんとかが多いんですが、そういう方も「おもしろいね~」と近付いてくる。その一言がもらえればオーケー、してやったりです。
子供達は機体にペタペタ触ります。機体の外も中も、操縦桿も自由に触ってもらいます。記憶に残る時間ができているのかな、という意味で成功だと思っています」
「みんなの飛行機」ジェネアビの挑戦
さて筆者の感想なのだが、実のところ「飛行機にアニメのマーキング」ということ自体は自動車のいわゆる「痛車」と比べると、あまり違和感がない。アニメとのタイアップは、航空会社のキャンペーンなどでよく行われているからだ。ではこの「痛飛行機」がどうオリジナルなのかと言うと、飛行機自体が個人所有のプライベート機であり、そのマーキングやフライトも「空飛ぶたぬき」さんの個人的な趣味だという点に尽きるだろう。いわば「同人」なのだ。
航空会社の旅客便や自衛隊機などを除く、個人や企業での航空機利用をジェネラルアビエーション、通称「ジェネアビ」と呼ぶ。日本では個人が飛行機を所有したり、個人的な目的のために飛行機を飛ばすことにまだ馴染みが薄く、ジェネアビもマスコミの取材ヘリや警察消防など、公的なものが大半だ。日本で個人的に飛行機を飛ばすことには制約が多い。
そんな中で、飛行機をもっと多様な楽しみのために使って欲しい、もっと親しんでほしいという空飛ぶたぬき氏の試みは、日本のジェネアビの新たな挑戦と言えるだろう。
Image Credit: 大貫剛
■痛飛行機プロジェクト支援ファンド
https://kemono.fly-tanuki.jp/