河野太郎外務大臣は、外務大臣専用機としてアメリカのガルフストリーム社製「G650ER」を2019年度予算で購入するよう希望したと報じられました。このG650ERは、どんな飛行機なのでしょうか。
世界のVIPが利用する個人用ジェット
まず、この飛行機はビジネスジェット機と呼ばれる小型のジェット機です。ビジネスジェット機はプライベートジェット機とも呼ばれるように、個人や企業などで保有したり、チャーターしたりするのが主な使われ方です。
国際線の旅客機は1日1便ということも多いですし、目的地への直行便があるとは限りません。プライベート機なら自由な時間に飛行できますから、1回の出張で数億円もの利益がある経営者や映画・音楽・スポーツなどのスーパースター、国益のための交渉に臨む政府高官などのVIPは、1回数千万円以上の費用に見合うメリットがあるというわけです。
ビジネスジェット機の世界最高峰
日本では本田技研工業が開発したホンダジェットが有名ですが、ホンダジェットは乗員2名、乗客4名の「乗用車クラス」。一方G650ERは乗員4名、乗客19名の「マイクロバスクラス」で、ビジネスジェット機の中でも最大級です。(もっと大型の飛行機が欲しい場合は、普通の旅客機をプライベート機として改造します。)
またG650ERの大きな特徴は、約14,000kmもの航続距離です。これは国際線用のボーイング767旅客機より長く、777旅客機より少し短い程度。つまり旅客機と同じように、日本から欧米へも無着陸で飛行できるということです。
ちなみに価格も1機80億円程度と、90人乗りの国産ジェット旅客機MRJよりやや高価です。しかしMRJは近距離用で航続距離は4,000km弱しかありませんから、外務大臣専用機には足りません。ホンダジェットも2,000km程度です。これらの点からG650ERは「世界最高峰のビジネスジェット機」のひとつと言えます。
福田総理も使用、航空自衛隊の「U-4」
ちなみに航空自衛隊も、G650ERの数世代前の機種である「ガルフストリーム4」を「U-4多用途支援機」という名前で運用しており、福田康夫総理大臣(当時)が北京オリンピックに出席する際に使用したことがあります。U-4は航続距離こそ約6,500kmと短いですが、機体サイズはG650ERより少し小さい程度。北京の距離なら大型のボーイング747「ジャンボジェット」を改造した政府専用機を使うまでもないという判断で使用されました。
航空会社の旅客機よりずっと小型で、それでいて旅客機と変わりのない航続距離を持つG650ERのようなビジネスジェット機は、外務大臣専用機としてはベストチョイスです。とはいえ高価な買い物ですから、日本の納税者の理解は得られるでしょうか。
Image Credit: Gulfstream、航空自衛隊