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まもなく千葉大会!レッドブルエアレース室屋選手と「福島の未来」

sorae.jp 2018年5月22日 7時0分

今週末の5月26日・27日に千葉市で開催されるレッドブルエアレース千葉大会。日本人唯一のレッドブルエアレースパイロット室屋義秀選手は、ホームグラウンドのふくしまスカイパークで愛機を公開し、これまでのレース展開と今後の展望を語った。

カンヌ戦で機体改造、フィーリング変えずに空気抵抗削減

2018年シーズン初戦のアブダビ戦には昨年末と大差ない機体でスタートした室屋選手だったが、第2戦のカンヌ戦では予告通り、新規開発のエンジンカウル(カバー)に交換。さらに、主翼端を上に反り返ったウィングレットに交換して出場した。第3戦の千葉戦にもこの状態で臨む。

上が昨年、下が今回の写真。エンジンカウルと主翼端が大きく変わった。

エンジンカウルは空気抵抗を減らすだけでなく、空冷式エンジンにとってはエンジン冷却装置そのものでもある。2017年シーズンの初戦でアブダビ戦ではエンジンの過熱で順位を落としており、エンジン冷却はエアレースにとって非常に重要だ。新しいカバーは従来のカバーと比べると側面が複雑に絞り込まれた形状をしており、空気抵抗を減らしている。前面の吸気口は他チームと比べるとかなり大きくなっており、下面の排気口も形状が変更されている。細かい調整は現在も行われているそうだ。

 

一方、主翼の抵抗を減らすウィングレットは今年初めの段階では「年の後半に投入できれば」と言及していたが、サプライズでのカンヌ戦投入となった。従来は平面のまま後ろに流れるようなレイクドウィングチップ形状だったが、新しいウィングレットはそれをそのまま少し上へ反らせたような形をしている。他チームでは小さな尾翼を取り付けたようなデザインも多くみられる中で、かなり控えめに見える。

ウィングレットについて説明する室屋選手

「操縦フィーリングが変わらない設計にしています。大きなウィングレットを付けると方向制御が若干不安定になることがあります。まだデータは取り切れていないのですが、少なくとも(従来のウィングチップと比べて)マイナスではなさそうなので導入した感じです」(室屋選手)

大きなウィングレットの例(昨年のブラジョー選手の機体)

なお、従来のウィングチップは青色だったが、新しいウィングレットは緑色。この理由をスタッフの方に伺ったところ、「エンジンカウル用に調色した緑色のペンキが残っていたので」という意外な答えが返ってきた。

新しいウィングレットはペンキの調色の関係で、主翼よりわずかに色が明るい。また重ね塗りで鏡のような主翼と比べると、ややマットな仕上がり。

 

昨年より高得点で迎える千葉

昨年は千葉大会2年連続優勝を含め、8大会中4大会優勝で年間チャンピオンに輝いた室屋選手。しかし最終戦でトップのソンカ選手をギリギリ抜いての逆転チャンピオンだったように、優勝以外の大会での順位が低く、波が激しい1年でもあった。特に最初のアブダビ戦はエンジンのオーバーヒートで初戦敗退13位と苦しいスタート。第2戦サンディエゴで優勝し15ポイントを獲得してポイント2位に浮上し、千葉戦に臨んでいた。

一方今年はアブダビで2位、カンヌで4位と2戦とも決勝のファイナル4に進出して合計19ポイントを獲得しており、昨年よりはポイントが高いスタートだ。以前から室屋選手は「毎回優勝するわけにはいかないが、ファイナル4に進出し続ければ点数は着実に積み上げられる」と語っており、今年はその目標を体現しているともいえる。しかし、優勝せずに年間チャンピオンになれるほど甘くはない。

「ファイナルに残るというのは安定度なので、その意味では目標に近いところを行ってると思います。でもコンディションの良い状態でファイナル進出したときに、優勝を取るレースは必要になる。やっぱり2勝はしないとチャンピオンに届かないと思います。1位の15ポイントと4位の7ポイントでは差が大きいですからね」(室屋選手)

シーズン前半の山場となるのはやはり地元日本、千葉大会だろう。5月初旬にふくしまスカイパークへレース機体を持ち込み、大会本番まで1日2、3フライトのトレーニングを重ねて機体の調整も行うという。ホームグラウンドならではの有利さもある。

福島の未来へ、「エアレース福島大会」へ

室屋選手には「ビジョン2025」という夢もある。ふくしまスカイパークをベースに多くの人達、とりわけ子供たちに航空文化や航空産業を広めていこうという遠大な構想だ。その第一歩として「パスファインダー航空機展示場」(パスファインダーは室屋選手の活動ベースである会社名)をふくしまスカイパーク内に着工した。

「9月か10月ぐらいには(建物が)できる予定で、中の準備をして来年の春には本格的にオープンします。飛行機を軸に、子供たちがいろんなものに興味を持ったり、やりたいことを実現することを伝えていけたらいいなと。やりたいことができない大人が子供たちの夢を潰してしまう世の中なので、そうじゃないよ、自分もできるんだよという話を教えてあげたい」(室屋選手)

室屋選手のもうひとつの夢は、レッドブル・エアレースの福島での開催だ。昨年のインディアナポリス大会では、インディ500チャンピオンの佐藤琢磨選手から地元福島への思いを聞かれ、「福島でエアレースを開催し、原発事故の影響から復興した福島を世界に知ってもらいたい」と語っている。見通しはどうなのだろうか。

「いろんなところでいろんな人に話はしています。福島の復興の総仕上げだと思っているので、(エアレースを開催するなら)浜通りの方が良いかなとも思っています。安全で広い場所もたくさんあるしね。レースだけじゃなく(福島の現状が)世界にいっぱい発信されれば、すごくいいPRになると思いますね。

僕1人で喋れる量は限られているのでね、みなさん(メディアやファン)の力も借りながらムーブメントが出来てくれば、開催につながると思っています。ただ今年は無理ですし、来年でもまだ時間が足りないかなという気がします。もうちょっと機が熟して雰囲気ができれば、県も動いてくれるんじゃないかな」(室屋選手)

 

Image Credit: 大貫剛

 

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