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崩壊へのプロローグか?小惑星から伸びる尾の正体とは

sorae.jp 2019年4月3日 19時17分

こちらの画像は、一見すると青く美しい2本の尾を持った「彗星」を捉えた写真のようです。しかし、その先端に輝くのは彗星ではなく、「小惑星」に分類されている天体なのです。

写真を撮影したのは「ハッブル」宇宙望遠鏡。尾を引いているのは、1988年に発見された「ゴールト(6478 Gault)」という小惑星で、直径は4~9kmと推定されています。

尾の正体は、ゴールトから放出された塵や岩石です。長いほうの尾の長さは80万km(地球から月までの平均距離の2倍強)、短いほうの尾はその4分の1の長さと見積もられています。尾を形成する岩や塵をすべてまとめると直径150mに達するようですが、どうして小惑星からこれほどの量の物質が放出されたのでしょうか。

2019年1月5日、ハワイに設置されている小惑星警報システム「ATLAS」によってゴールトの長いほうの尾が偶然キャッチされて以来、ATLASや「パンスターズ(Pan-STARRS)」による過去の観測データの再チェックや、各地の望遠鏡による追跡観測が実施されました。

その結果、ゴールトの自転周期がわずか2時間であることがわかりました。今回の研究に参加したハワイ大学のJan Kleyna氏によれば、高速な自転によって不安定化したゴールトの表面は、小石がぶつかるようなちょっとした衝撃でも大規模な物質の放出を引き起こす可能性があるといいます。

また、ゴールトの自転がここまで速くなったのは、研究者の頭文字から命名された「YORP効果」によるものと考えられています。小惑星のように形が不均一な天体では、太陽の光から受ける圧力や天体が放射する熱の強さが場所によって異なるため、自転速度が速くなったり遅くなったりすることが知られています。ゴールトの場合、YORP効果によって1億年以上に渡り自転が加速され続けた可能性が示唆されています。

今回撮影された尾は今後数カ月ほどで拡散して見えなくなってしまうようですが、過去には自転速度の加速が原因で崩壊したと考えられる天体も観測されています。いずれはゴールトも同じ運命を辿ることになるのかもしれません。

 

Image credit: NASA, ESA, NASA, ESA, K. Meech and J. Kleyna (University of Hawaii), O. Hainaut (European Southern Observatory), L. Calçada
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/hubble-watches-spun-up-asteroid-coming-apart
https://www.spacetelescope.org/news/heic1906/
文/松村武宏

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