こちらの画像は、NASAの水星探査機「メッセンジャー」が撮影した「水星」の写真です。とてもカラフルに見えるのは、水星表面の物質や性質に応じて色が強調されているから。肉眼でこのような色合いに見えるわけではありません。
今回、NASAのゴダード宇宙飛行センターの研究チームは、2011年3月から2015年4月までの4年間に渡り水星を観測したメッセンジャーのデータをもとに、水星の内部構造を調査。その結果、最も内側にある「内核」が固体であることがわかりました。
水星の内部構造は地球に似ていて、表面を覆う「地殻」の内側には「マントル」が、さらにその奥には金属でできた「核」が存在すると考えられています。2007年に実施されたゴールドストーン深宇宙通信施設からのレーダー探査によって、水星の核は少なくともその一部が液体であると判明していましたが、核のすべてが液体なのか、それとも地球ように液体の「外核」と固体の「内核」に分かれているのかは、まだはっきりとはわかっていませんでした。
研究チームは水星の内部を調べるために、最終的に高度65マイル(およそ105km)という低高度で水星を観測したメッセンジャーの速度変化に着目しました。記録された速度変化をもたらし得る内部構造をシミュレーションによって解析したところ、直径およそ2,000kmの固体の内核が存在することがわかったのです。
下の画像は、今回の研究をもとにした水星内部の模式図。一番内側の「Solid Inner Core」が、今回その存在が確認された内核を示しています。ちなみに、液体の外核(Outer Molten Core)も含めた核全体の直径はおよそ4,000km。核の体積は水星全体の85パーセントを占めています。
水星の核が地球と同じように内核と外核に分かれていることは、地球の磁場について理解を深める上での手がかりになるかもしれません。研究を率いたAntonio Genova氏は「地球よりも速いペースで核が冷えている水星は、地球の磁場が将来どのように変化するのかを予測するのに役立つ可能性がある」とコメントしています。
水星の内核は、メッセンジャーが観測を行ったことで初めて存在を確認することができました。NASAに限らず、予算の問題などから探査計画が縮小・キャンセルされることはありますが、虎穴に入らずんば虎子を得ず、実際に探査機を派遣しなければ知り得ないこともあるのだと改めて気付かされました。
Image credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/mercurys-spin-and-gravity-reveals-the-planets-inner-solid-core
文/松村武宏